これからの日本人の「暮らし」「働き方」「人生設計」のイメージを描き、併せてそれを支える仕組みについて、幅広い視野から検討をすすめてきた『人生85年ビジョン懇談会』(座長・岩男壽美子慶應義塾大学名誉教授)が報告書「人生85年時代に向けたリ・デザイン」をまとめた。仕事と生活のバランスのとれた働き方実現の提言では「年中無休の24時間営業など働き方に影響するサービスのあり方の見直しに向けた議論や取組」などもあげている。
この懇談会は舛添要一厚生労働大臣が有識者18名を参集して発足させ、昨年12月から7回にわたって、検討してきたもの。
報告書はこの60年あまりで平均寿命が30年伸び、従来の典型だった「20歳前後まで学校に通い、定年までひたすら働き、その後は年金生活で余生をすごす」という人生設計は合わないものになりつつある、と指摘。
このため、国民1人1人が健康で充実した暮らしを送れるように人生設計をデザインし直し、仕事、生活、遊び、学びなど生涯現役の社会づくりをすすめることが必要で、そのための提言を行っている。厚生労働省では施策として実施できるものについては積極的に取り組んでいきたいとしている。
提言では(1)こどものころから文化を学び、他者に支えられていることを学びながら自分づくりに励むこと。具体的には芸術・文化を楽しみ、学ぶ機会づくりやふれあい授業やインターンシップなど体験的な学びの推進、学校や企業、地域で老いや病、死に直面している人々のケアに参加するなど、死と向き合い、より良く生きるカリキュラムの普及を図る(2)一生のうちに何度でも学び直すことができる環境整備を図る。また、性別や年齢で区切ることのない採用から退職までの雇用システムづくりを。正社員を希望するフリーターなどに対する強力な支援を通じた雇用や生活の安定を図る(3)仕事と生活のバランスのとれた働き方を実現し、特に女性も力を存分に発揮できるようにする。具体的には育児、介護、学びなどと職業キャリアの積み重ねとを両立しやすい柔軟な働き方の実現に向けた環境整備。職業キャリアの節目においての心身の充実と職業能力の磨き直しに向けた長期休暇制度の普及。年中無休の24時間営業など働き方に影響するサービスのあり方の見直しに向けた議論や取組。雇用管理の見直しに加え、職場風土の見直しも重要(4)生きる知恵や経験を活かし、人のため、世間のために役立つ生き方を探る、などとなっている。