1999年頃から、野村総合研究所<4307>が提唱し始めたことが語源といわれる、ユビキタス・ネットワーク。15年前はまだ理想とされていた「社会のいたるところでネットワークに繋がる」社会が今、ほぼ現実のものとなりつつある。携帯電話、スマートフォン、モバイルPCなどの急速な普及、発展はもとより、ICタグの実用化が進み、社会生活の中に浸透したことで、世界はネットワークで結ばれ、多大なる恩恵を享受できるようになった。
そして、そのユビキタス情報環境を支えている基盤が、センサネットワーク技術だ。
センサネットワークが注目され始めた当初はまだ、センサ自体の高機能、高精度を目指すのはもちろんのこと、省電力化、省スペース化、長寿命化といういくつもの大きな課題を抱えていたが、これらが徐々に克服されるにつれ、利用場面が急速に広がった。
センサネットワークは、身近な交通網や社会生活の中で利用されるだけでなく、防災や災害、防犯対策、農業や医療などの専門分野にいたるまで、その役割と活用範囲は多岐に渡り、社会・経済活動から個人にまで密接に関わる、社会の重要な要素になりつつある。
市場規模は順調に推移しており、富士キメラ総研が12年4月に公開した「2012 センサデバイス/ソリューションビジネス市場調査総覧」によると、11年のセンサデバイス世界市場は前年比7.5パーセント増の3兆2,669億円となっており、20年には2011年比で38.6パーセント増の4兆5,293億円に達すると予測されている。
ただし、制御や計測などを目的とした需要は日本をはじめとする先進国では成熟した市場となりつつあることから、今後は産業機器や自動車分野、スマートフォンやタブレット端末向けを中心になると予想されている。また、それに伴って、より小型で大容量・高出力の蓄電デバイスが求められているのが現状だ。
そんな中、ローム株式会社<6963>が6月14日、業界最高レベルの高電圧化と低抵抗を両立させた電気二重層キャパシタ(EDLC)を開発し、6月中にサンプル出荷を行い、2014年1月から当面月産30万個の体制で量産を開始すると発表し、話題となっている。ロームはこれまで、センサネットワーク構築に向けた取り組みを強化しており、その補助電源として活用が期待できる蓄電デバイスEDLCの開発に着手していた。また、身近にあるエネルギーから電力を作るエネルギーハーベスト(環境発電)技術を使って動作する無線通信部品などに注力してきたが、EDLC単体での製品化は今回が初めてとなる。
ロームでは、今回の製品において材料選定と独自のプロセス、電解液の組成を見直すことで、業界最高の高電圧化に成功。また、集電極の表面処理を工夫することで、抵抗要因のひとつであった界面抵抗をほぼゼロにすることに成功した。
同分野では村田製作所<6981>をはじめ、太陽誘電<6976>、京セラ<6971>などが先行しているが、ロームでは高電圧・低抵抗だけでなく、これまでLEDやLSIを自社生産してきた経験と実績を生かしたピークアシストやバッテリーアシストにも最適な製品であることをアピールし、拡大を続ける市場でのシェア獲得を狙う。
今後、先進国だけでなく新興国へも拡がり、世界的な規模で発展をみせるであろうセンサネットワーク市場において、日本企業がしのぎを削って、高い技術力で貢献し、世界の市場を牽引していくのは頼もしいかぎりだ。(編集担当:藤原伊織)