ビッグデータの活用に向けて動き出した日本企業

2013年06月02日 19:41

 一日あたり2.5エクサバイト。これは現在、日々、世の中で生成されているデジタルデータ、いわゆるビッグデータの目安だ。

 エクサバイトといわれても、一般的には馴染みの薄い単位でピンとこないだろう。1エクサバイトは1000ペタバイト、1ペタバイトは1000テラバイト、つまり、2.5エクサバイトは250万テラバイトとなる。それだけの膨大なデータが日々、蓄積されているわけだ。しかも、この数値は世界中の端末の増加とともに爆発的に増え続けている。

 データの種類も、個人のメールやソーシャル・メディアへの投稿、インターネット上に保存された画像や映像などの個人的なものから、ICタグなどのセンサー、携帯電話のGPS信号など、実に様々な形式が雑多に含まれている。膨大な情報量である上に、構造化されていない非定型のデータ群であるため、従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しく、これまでは持て余されて、見過ごされてきた。

 しかし昨年あたりから、ビッグデータの有用性が見直され、これをいかに適切に収集、管理し、本格的にビジネスに活用しようと取り組む企業が増えている。

 例えば、トヨタ自動車<7203>は、同社のテレマティクスサービス「G-BOOK」を通じて収集・蓄積した車両の位置や速度、走行状況などの情報を含むプローブ情報を、個人情報を削除するなどの加工を施した上で、「ビッグデータ交通情報サービス」として、6月3日より、全国の自治体や一般企業を対象に提供することを発表した。同時に、個人向けにもスマートフォン向けテレマティクスサービス「smart G-BOOK」を一新し、同様のサービス提供を開始する。

 また、日立製作所<6501>と博報堂<2433>は、ビッグデータを活用したマーケティングとITの融合による事業インパクトの実現をめざして、データ・アナリティクス・マイスター、システムエンジニア、研究者、マーケティングコンサルタント、ビジネスプロデューサー、インタラクティブ・プラナーなど多様なバックグランドを持つ専門家により構成された「マーケット・インテリジェンス・ラボ」を設立。オープン・イノベーションの場として、データ解析サービス、データ活用プラットフォーム構築、新規事業創生支援の業務を中心に、4月から本格稼働している。

 さらには、ビッグデータそのものではなく、NEC<6701>のように、もともとはビッグデータの分析を行うために開発した、専門知識や複雑な設定なしで「いつもと違う」挙動を自動発見できる、インバリアント分析技術という独自技術を応用し、工場や発電所などの大規模なプラントにおける故障の予兆を膨大なセンサ情報から分析し、故障に至る前に設備の不健全な状況が把握できる「大規模プラント故障予兆監視システム」を開発するような企業も現れ始めている。

 ビッグデータの定義自体もまだ曖昧なので流行語的なイメージも否めないが、トラフィックが増大し続けている現状を考えれば、他社よりもいち早くビッグデータを取り入れて活用することは企業の急務であることは間違いない。

 膨大なトラフィックの森で道を見失わずに宝物を見つけることができれば、競争は圧倒的に優位になるだろう。(編集担当:藤原伊織)