消費税転嫁対策特別措置法が成立

2013年06月06日 20:12

 5日、小売業者による「消費税還元」とうたった特売表示を禁止する、「消費税転嫁対策特別措置法」が参院本会議により可決され、成立した。

 これは2017年3月末までの時限立法であり、来年4月に消費税が引き上げられた後、「増税分の値引き」「増税分をポイント還元」といったような表現の広告や宣伝が禁止となる。ただし小売業界内から、禁止とされる表現の線引きが分かりにくいとの意見があったため、条文に「消費税との関係を明示したもの」という文面が追加され、「新生活応援セール」や「3%値下げします」といったような表現は認められることとなった。

 これに違反した場合、違反した企業に対して消費者庁が是正を勧告。また、消費税の転嫁を拒否した企業には、公正取引委員会が支払いを勧告し、企業名を公表する方針だ。さらに、公取委に事実と異なる報告をした場合には、50万円以下の罰金が科される。

 さらに「消費税転嫁対策法」には、納入業者が引き上げられた消費税分をきちんと価格に上乗せ出来るように、大手の小売業者による買い叩きや不当な利益の提供などの禁止行為が列挙されている。こうすることで、小売業者による納入業者への「下請けいじめ」を防止する狙いもある。

 しかし、業界関係者が何より注目しているのは、現在では禁止されている「税抜き価格」の表示が認められたことだ。以前より税抜きによる表示を認めるよう求めていた日本チェーンストア協会は、今回のこの決定を評価しているが、「税込みの価格表示はすでに消費者の間で定着しているので、切り替えることで混乱を招く」との意見もある。

 また、「消費税転嫁対策法」は時限立法であるため、仮にこれまでの価格表示を「税抜き表示」に切り替えたとしても、期限が切れた後はそれを元に戻さなくてはいけない。その際にかかる手間とコストのことを考えて、価格表示切り替えに対して慎重な態度を示す小売店も少なくないようだ。

 これに対して消費者庁は、小売業界が消費税引き上げ時の価格表示の仕方について、具体的な例を基に指針を公表する予定。(編集担当:滝川幸平)