「そうっすね」「いや、違うっす」と答えていた被疑者が、検察取調べの録音・録画スタートで「違います」に早変わり・・・。最高検察庁では裁判員裁判が始まるのを前に、検察取調べの録音・録画を試行してきたが、平成18年8月から昨年12月末までの殺人、強盗殺人、強姦致傷など170件の事件について、検察取調べの録音・録画を試行した結果を公表。その中で、試行に関与した132人の検察官にアンケートを実施。録画・録音時の被疑者の言動変化について、83%(137件)の被疑者に変化はなかったものの、17%(29件)の被疑者に変化が見られたという。最高検察庁では「変化をみせる被疑者が一定程度存在することが明らかになった」と報告している。
変化の中身では供述態度の変化として「緊張して改まった態度になり、その後も、第3者に見られることを十分に意識して話していた」「録音・録画修了後に『何でこんなことをするのか、検事は私を信用していないのか』と不機嫌になった」など緊張が普段より高くなるとの回答が多かった。中には「裁判官に好印象を与えようと通常の取調べでは見られなかった涙を流すなどの変化が見られた」というものや、関西弁だった被疑者が急に標準語で話し出したというものもあった。
供述内容に変化があったというものも7%(12件)あった。その中身は「録音・録画実施前までは殺意を認めていたが、録音・録画を開始してから突如、殺意を否認する供述を始めた」というケースや「自己の関与を軽減させるなどしてこれまでの供述を後退させた」などのマイナスの影響報告。一方で、「通常の取調べより素直に殺意を認める供述を行った」という報告も出ていた。
こうしたなか、録音・録画されたものの証拠価値については「高い証拠価値がある」と「ある程度の証拠価値がある」をあわせた回答は96%にのぼっていた。
その理由として「被疑者自身が犯人であることや殺意があったことが自己の言葉ではっきり供述していることがわかる」「取調べ時の被疑者の言動がはっきり伝わり、少なくとも水掛け論は防止できる」などだった。
最高検察庁では自白調書の任意性を立証する手段の一環として、検察取調べの録音・録画についての検証を今後さらにすすめるために、4月以降、全国の地検本庁や裁判員裁判の対象事件を取り扱う地検支部でも、取調べの録音・録画の試行を行うことにしている。