東日本旅客鉄道<9020>(以下、JR東日本)は、Suicaの利用データをマーケティング目的で、日立<6501>に提供する件について、プライバシーの配慮に関する事前の説明が足りなかったとして「大変なご心配をおかけした」と謝罪した。
これは、Suicaユーザーの駅別利用者の性別年代構成、利用目的や滞在時間、乗降時間帯などを収集した情報を日立に提供し、日立がビッグデータ技術で解析するというもの。ただし、乗降履歴や利用時間、定期券の区間など個人データは含まない。そして、日立はそのレポートを販売する。10ヶ所の駅データ提供を1年間契約した場合の最低構成価格は500万円だという。
そもそも、今回の騒動は、6月の終わりに日立が「交通系ICカードのビッグデータ利活用による駅エリアマーケティング情報提供サービスを開始」という報道発表を行ったことに端を発する。これを受けて、Suicaユーザーが「気持ち悪い」などと批判が殺到した為に、それに応える形で、JR東日本が謝罪をしたという流れだ。
JR東日本は、「Suicaに関するデータの提供にあたっては、法令の趣旨にのっとり、プライバシーに配慮して厳正に取り扱っておりますが、この公表後、当社としてこうした取り扱いについて事前にお知らせしていなかったことから、様々なお問い合わせやご意見、特にご説明が不十分だったというお叱りを頂戴し、お客さまには大変なご心配をおかけいたしました。当社として極めて重く受け止めており、今後は十分に配慮して対応してまいります」とプレスリリースの中で述べている。『この公表後』とは、日立製作所が駅のマーケティング資料を作成・販売することを指している。
確かに、「法令の趣旨にのっとり、プライバシーに配慮して厳正に取り扱って」いるとしても、やはりSuicaの利用者が、「気持ち悪い」と感じるのは自然なことだろう。今回の批判があるまで何の発表も行わなかったJR東日本の姿勢は、問題があると言わざるを得ない。こんなところに、「国鉄」時代のお役所体質が未だに残っているのではないだろうか。
現代の世論というものは、IT(情報技術)の飛躍的な進歩により、実にダイレクトに素早く反応するといったことを、なぜJR東日本は理解できていなかったのだろうか。同社は、現在、「Suicaに関するデータの社外への提供についてよくいただくお問い合わせ」というPDFを同社のウェブサイトから配布しているが、それにしてもこのような事態になる前に配布していればと考えるのは筆者だけではないだろう。民営化から四半世紀を経ても「お役所」体質が依然残っているとすれば、それはまた別の問題を生み出す温床となるだろう。(編集担当:久保田雄城)