自転車ブームでも「都市型レンタサイクル」が普及しない理由

2013年08月17日 17:30

 自転車ブームがいわれるようになって久しい。ガソリン価格の高騰や健康志向の高まりなどから、自転車通勤をする人も増えた。東京や大阪などの大都市圏では、自動車の保有台数よりも自転車の方が多いほどである。一方でこうした都市部の駅前には放置自転車があふれ、問題にもなっている。

 その対策として数年前から普及し始めたのが、「都市型レンタサイクル」だ。これまでレンタサイクルといえば観光地での時間貸し利用が中心だったが、都市型レンタサイクルは違う。自治体などが用意した自転車を利用者が時間をずらして共有し、朝夕は主に通勤や通学、日中は駅を起点とした買い物などに活用してもらおうという仕組みである。

 たとえば東京都世田谷区には、6駅7か所にレンタサイクルポートがある。利用には運転免許証などの本人確認書類が必要で、料金は1ヶ月あたり2000円(学生1700円)、日中の時間貸しは1回あたり200円だ。6か所のうち4つのポートでは、借りる場所と返す場所が違ってもOKなコミュニティサイクルシステムを導入している。

 またJR西日本グループは「駅リンくん」と名づけた都市型レンタサイクル事業を展開。京阪神の主要駅に営業所があり、料金は1ヶ月あたり1500~2500円だ。1ヶ月の定期利用には保証金8000円が必要だが、退会時に返金される。こうしたレンタサイクルを展開する都市が増えれば、放置自転車は減り、環境問題対策としても有効だろう。

 ところが実際に、都市型レンタサイクルがブームになっているかといえばそうでもない。24時間の営業所が少ないことや、自治体にとってはシステム構築や駐輪場の整備費用が重荷となるなど、普及へ向けた課題が多いからだ。自治体の腰は重い。

 また、人々の「シェア」に対する意識が追いつかないために普及しないという側面もありそうだ。数年前から広がりを見せているカーシェアリングなどと比べて、価格の安い自転車はまだまだ「個人で所有するもの」という意識が主流なのだろう。

 とはいえ、個人で自転車をもつ場合にかかる駐輪料金や整備費用、盗難のリスクなどを考えれば、レンタサイクルがお得になる場合もある。ブームとなる日は遠そうだが、一度利用してみる価値はあるかもしれない。(編集担当:北条かや)