2009年7月に道路交通法規則の一部改正にあわせ、前と後ろに子どもを乗せることができる幼児2人同乗適合自転車、いわゆる3人乗り自転車が認可されて以来、その主翼を担っている電動アシスト自転車。しかし、子どもふたりを乗せることができる期間は数年と短い上に、価格は決して安いものではない。その為、いくつかの自治体が子育て支援策として、3人乗り電動アシスト自転車のレンタル制度を実施している。
レンタルの制度も様々で、愛知県豊橋市や奈良県生駒市などの多くの自治体が採用しているのは月額制であるが、茨城県古河市などは年額制、兵庫県三木市などは無料となっている。いずれの自治体も用意している台数は数台から数十台程度。2011年3月から同制度を導入した岐阜市では、6000円/6か月間の貸出料で募集したところ50台の車両に対して84件の応募があったことなどからも、ニーズの高さが窺えるであろう。
こうしたニーズの高まり、利用の普及が進むと同時に必要性が高まっているのが、自転車運転に関するルールやマナー等に対する啓蒙活動である。レンタル制度を導入している自治体おいても、一般的な自転車のルールやマナーから三人乗り自転車を利用するためのルールなどについて、貸出時に講習会を開催することがある。
こうした講習会を担うのは、警察や自治体だけでなく、電動アシスト自転車を製造・販売するメーカーである。電動アシスト自転車のパイオニアであるヤマハ発動機は、警察や自治体の要請を受けて自転車交通安全講習会を随時展開している他、全国の販売店を対象に指導員講習を実施。一般の講習会で乗り方指導を行うのは二輪車安全指導員の資格を持つ社員であるが、三人乗り自転車に関しては、その有資格者を対象に社内で「幼児2人同乗モデル安全乗り方指導講習会」を開き、合格した指導者のみを各地で開かれる安全講習会に派遣している。講習会では、水が入ったタンクを前後に積んで子どもを乗せたときのシミュレーション等を実施。10kg以上の水を積んだ場合でも、ふらつかずに漕ぎ出しができる電動アシスト自転車ならではの利点を体験するだけではなく、自転車に関わる法令等の座学も行われるという。
一度体験すると一般の自転車には戻れないという電動アシスト自転車。メーカーのこうした取り組みを行うことで、さらに裾野は広がるのではないか。