普及期のスタートラインで電動バイクが抱える問題とは

2012年01月05日 11:00

 電動バイク市場は低価格の輸入モデルが市場を牽引した感はあるが、東日本大震災がもたらした消費者の意識変化を反映する形で、被災地のみならず、全国的に広がりを見せた。

 普及するきっかけとして、ローコストというキーワードは外せないが、電動バイクの場合、寿命が来たバッテリーの回収処理やメンテナンスなど購入後に訪れる問題まで想定しているものばかりではない。普及はしたが、根付かないという最悪のケースだってないことはない。

 新規参入したベンチャー企業なども多い電動バイクの市場ではあるが、老舗のバイクメーカーも実は普及のための地道な活動を行っている。

 ヤマハ発動機は一昨年より発売している「EC-03」は発売当初より、派手な宣伝活動は控え、まずは社会に電動バイクが根付くために、電動バイクの認知度アップや理解促進策を打ち出すなどの動きを積極的に行っている。

 その中でも、一番重要視しているのが、自治体との共同作業による普及活動だ。これは、日本各地の地方自治体に体験型のプロジェクト(レンタルなど)を提案し、地域住民にまずは興味を持ってもらおうとしているもので、昨年の7月に開始された「神奈川EVバイク普及プロジェクト」(現在はレンタル事業のみ)を皮切りに、現在まで全国の多くの地域で行われた実績を持つ。現在継続中の地域やこれから取り組む自治体もあり、正に草の根運動的な取組みを地道に行っている。その取組む内容もそれぞれで、自治体のカラーなどが出ているケースもある。例えば、千葉県の柏の葉・流山で行われている「いろんな乗り物 街乗り!シェアリング」においては、メーカー・自治体・学校が連携して次世代環境都市を目指した新しい街づくりに協力する形で同社は参入し、「EC-03」を5台貸し出している。ここでは無人のポートでICカードを使用して、バイクだけではなく、ヘルメットまでも貸し出しをするというサービス実験も導入されている。

 さらには、消費者が買いやすい環境の整備をするために、補助金導入を自治体にも働きかけている。現在、国の補助金として最大3万円の交付があるが、住んでいる地域によっては自治体も補助金を支給しているので、かなり安い金額で購入することが可能だ。

 このように、あまり表に出てこない地道な仕事を重ねることが、将来の本格的な普及に繋がるとヤマハ発では考えている。そこには「まず触れてもらいたい」、そして、その”乗り心地”や”安全性”"環境性”を直接感じてもらいたいというヤマハ発動機の願いが込められている。同社では今後も試乗会を日本全国で積極的に行っていく予定で、その活動は、電動バイクを根付かせるためには大切なことだとしている。

  ホンダやスズキといった大手メーカーも市場参入を果たしており、電動バイク市場は来年以降、熾烈な覇権争いをしながら、成長していくに違いない。ゼロエミッションを実現し、低炭素社会への貢献ができる究極のシティコミューターとして、電動バイクがさらなる市場拡大をするためには、この普及スタートの時期にどれだけの準備をしたかにかかっている。