山本庸幸(つねゆき)前内閣法制局長官が集団的自衛権の行使について「難しい」とし、完全な集団的自衛権を行使できるようにするには憲法を改正した方が適切との考えを示したことに対し、菅義偉官房長官は21日、「内閣法制局長官を勤められて、(現在)最高裁判事である立場の人が憲法改正の必要性までを公の場で言われたことには、率直に言って、違和感を持つ」と不快感をあらわにした。
政府は憲法改正を待たず、憲法解釈によって個別具体のケースで集団的自衛権の行使を法的に裏付けていくことにより、集団的自衛権の行使に慎重な与党の公明党や国民の理解を得て行きたい考えで、自民党の石破茂幹事長も集団的自衛権の行使は個別的自衛権と違い時間的にゆとりがあるはずなので、法的裏づけとともに国会での事前承認が必要とすべきだ、との考えを示している。
ただ、行使はしたいが国民や公明党の理解を得られないだろうから個別具体に行使できるケースを決め、そのうえで行使には国会の事前承認が必要という「行使乱用の歯止め」を担保する考えがあっても、憲法改正をしなければ行使はできないとされると安保法制懇談会の提言や政府が法制局長官の首の挿げ替えまで異例の形で行って解釈改憲の環境づくりをしてきたことがすべて水の泡になるとの危機感は隠せなかった。前内閣法制局長官の発言だけに重い発言といわなければならない。内閣法制局長官が代わるだけで憲法解釈が変わるようなら法の安定性が損なわれかねず、この点をどう担保するのか、安倍政権にとっては大きな賭けにもなりかねない。(編集担当:森高龍二)