数々の再建政策を行ってきたものの、今ひとつその効果が出ていなかったシャープ<6753>だが、ここに来て、復活への明るい兆しが見えてきたようだ。
同社を取り巻く事業環境は、円高基調の恒常化やデジタル商品の急速な市場価格の下落等に加えリーマンショック後の先進国経済の停滞や、エコポイント終了後の国内液晶テレビ市場の急速な縮小などの厳しい状況が続いた。そのような要因から同社グループは、2011 年度と12年度で合計 9000億円を超える赤字を計上している。こういったことから、同社は在庫の適正化や希望退職といった人件費を中心とする固定費の削減などの経営改善の諸施策を推進したことにより、12年度下半期には営業損益の黒字転換を果たしている。
そんな中、シャープは新株式発行と株式の売出しついて発表した。この資金調達策は、二つの柱から成り立っている。ひとつは、公募による新株式発行。二つ目は国内企業三社に対する第三者割当増資である。その内訳は、一般公募による新株式発行による調達予定金額が、約1490億円(株式4億800万株分)と、マキタ<6586>、LIXIL、デンソー<6902>3社の国内企業に対する増資で、約175億円分(株式5021万8000株分)を見込んでいる。
マキタとは、シャープが保有するセンサーなど先進のエレクトロニクス技術を活かした電動工具や家庭用機器の共同開発など行い、LIXILとは、LIXILが有する建材技術とシャープが有する電材技術を融合させた製品の共同開発を計画している。またデンソーとはデンソーの車載機器技術に家電メーカーであるシャープの先端技術を融合させ、両社で車の快適性、安全性、利便性を向上させる新たな価値創造を目指した協業を推進していくとしている。
また、シャープはスマートフォンやタブレット端末向けカメラモジュールを中心とした電子デバイスが堅調に推移していることや、メガソーラーや住宅向けの需要が増している太陽電池、さらにテレビ用大型液晶パネルなどが、期初の想定よりも販売が好調なことを受けて、13年9月中間決算の業績予想を上方修正した。
売上高については、前回予想を400億円上回る1兆3100億円に修正し営業利益を従来予想の2倍に当たる300億円とした。最終損失も200億円から半額の100億円へ修正している。
こういったことから、シャープはいよいよ復活への足がかりをつかんだとみてよいのではないか。少なくとも最悪の時期は脱出したようである。(編集担当:久保田雄城)