牧場で働くというとロマンがあるように感じられるが実際には過酷な労働であることを経験者なら誰でも知っている。例えば、牛の発情の兆候というのは、目視で24時間の監視が必要である。要するに24時間労働といっても過言ではない。しかし、それもそう遠くない内に昔話しとなる日が来るかもしれない。
富士通<6702>は、通信機器メーカーのコムテック<9657>と共同開発した、牛の発情を検知し繁殖効率化につなげるクラウドサービス「牛歩SaaS」(FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウド Akisai 牛歩SaaS)を、海外に向けて展開していく。
「牛歩SaaS」は、これまで国内で4万頭の販売実績がある牛歩システムをクラウド化したもの。これは発情時に歩数の増加が見られる牛の行動特性を利用して、牛に装着した歩数計による検知から畜産農家に種付けを促し、高い授精率で繁殖させることを可能にするシステムだ。
このサービスは、雌牛に歩数計を装着することで、歩数情報が1時間間隔で富士通のクラウド上に集積・分析される。農家は、インターネット経由で1時間単位の牛の行動量をグラフで確認することができるほか、発情兆候が見られたときには自動的に登録された携帯電話などに連絡メールが入るため、発情兆候を見逃さず、種付けを行うことが可能となる。
また、発情開始から約16時間後である授精適期の前後どちらで種付けを行うかによって、約70%の確率で雌雄が産み分けられることを牛歩システムの過去の実績より確認しており、このシステムを産み分けにも活用することができる。
牛の健康状態を把握できるので、死産率を減らすとともに親牛の生存率も長くすることができる。放牧、つなぎなどのすべての飼養形態に対応するため、グローバルにも展開できるシステムである。
このサービスは、2012年より北海道、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の国内の牧場において運用を既に開始してされている。また、韓国では実証実験を経て13年3月より先行して商用化を開始し、現在3牧場にて利用されている。13年度中に欧州・オーストラリアにおいて実証実験を開始し、今後は世界中の牛の繁殖と健康維持を支援するために、さらに幅広く「牛歩SaaS」を展開し、3年間で50万頭への導入を目指している。(編集担当:久保田雄城)