安倍政権の掲げる経済政策、いわゆるアベノミクス効果により、景気回復への期待は高まるものの、国内の製造業にとっては相変わらず厳しい状況が続いている。
とくに鉄鋼や化学などの国内設備の縮小は深刻だ。神戸製鋼所<5406>は5月29日、鉄鋼事業の構造改革計画を発表し、赤字続きの事業立て直しの為、2017年度をメドに神戸製鉄所の高炉を休止することを発表した。また、国内鉄鋼大手では、新日鉄住金<5401>が3月に発表した中期経営計画において、2015年度末を目処に君津製鉄所の第3高炉を休止すること及び和歌山製鉄所の新2高炉の稼働を当面延期することを発表したばかりだ。
アジアを中心とする新興国の発展に伴って、日本の製造業を取り巻く環境は年々、複雑性を増している。製造業の海外生産移管が進み、国内でのものづくりの価値が希薄化していく中、これまでのように「いいものをつくる」という信念だけでは、日本企業がグローバル市場で勝ち残ることは難しい状況だ。
しかし、このような流れの中にありながらも、国内の製造現場にあえて目を向け、業務プロセスの革新を図ることで、日本のものづくり復活を目指す前向きな取り組みも少なくない。2013年6月19日~21日の期間、東京ビッグサイトで開催された「第24回 設計・製造ソリューション展(DMS 2013)」において、NEC<6701>と富士通<6702>が、製造業の生産革新に最適なソリューションをアピールして話題となった。
NECでは、販売・開発・物流のプロセスと生産プロセスは一体で不可分のものという考えのもと、約15年前から「NEC Production System研究会」を立ち上げ、生産方法の確立を図ってきた。ここで培った自社ノウハウをもとに、業務プロセスの革新やITシステムの導入、コンサルテーションなどを一環してサポートするソリューションサービス「ものづくり共創プログラム」を展開している。
また、富士通でも、同社グループにおける長年のノウハウ、ツール、人材を結集し、日本のものづくり全領域を総合的に支援するサービス「ものづくり革新隊」を12年10月から展開している。
この「ものづくり革新隊」は、「ものづくりエキスパートサービス」(人材)と「ものづくりツール」(ツール)「ものづくり受託サービス」(実践ノウハウ)の3つの柱で構成されるソリューションサービスで、製造業務の運営や運用オペレーションをはじめ、製造業務のプロセス改革や運用方法の刷新、開発や生産の効率化・連携強化などをトータルでサポートする。
両社の共通した強みとしては、自らが製造業としてのノウハウを持ちながら、日本を代表する大手ITベンダーでもあることだ。製造業者として同じ目線に立った生産革新のノウハウが提供できるうえに、経営プロセスやPLMなど包括的な提案が行えるところはユーザーにとって大きな魅力となっている。
市場が急速にグローバル化する中、企業の繫栄を持続する為には、海外に製造拠点を移し、流出してしまうのは経営リスクの回避という意味でも必然の流れかもしれない。しかしながら、その状態が長く続けば当然ながら、国としての力は衰退の一途を辿るばかりだ。しかも、その動きは加速度を増しており、多くの経営者は、国内回帰は難しいと表明しているが、本当にそれだけが正しい選択なのだろうか。
日本の企業、ひいては日本の国の永続的な安定を目指すのであれば、NECや富士通のような取り組みを推し進め、今こそ、国内の産業の建て直しを図ることも選択肢の一つであることは間違いない。(編集担当:藤原伊織)