パナソニックは、病院内の薬剤や検体を人手に替わって、全自動で搬送する「病院内自律搬送ロボットHOSPI(ホスピー)」の販売を開始する。
日本の人口構造の高齢化が進む中で、医療現場となる病院では経営の健全化と医療看護サービスの質の維持・向上が強く求められている。同社は、病院の本来業務である医療・看護業務を阻害する間接業務の効率化に着目し、これを改善できるロボットの開発を進めてきた。
これまで病院では、薬剤や検体の搬送については、主にカルテの随時搬送用として導入されたエアシュータや天井近傍を走らせる軌道台車が利用されてきた。しかし、電子カルテの導入とともにカルテの搬送は量・頻度ともに激減し、搬送ミスの許されない薬剤や検体などの搬送手段について、改めて模索されることとなった。
一方で、薬剤や検体の搬送は、原則24時間365日発生し、これを看護師や検査技師が行うと本業を妨げることとなり、人手による代替は妥当ではないとの見方が強くある。そのような事情から、人手による搬送に近い特性を持ち、エアシュータなど従来の搬送装置よりも導入費用や維持費用が合理的な「ロボット」に関心が高まってきた。
このような背景のもと、同社は長年蓄積してきた自律移動ロボットの技術を適用した搬送ロボットを開発し、松下記念病院、埼玉医大国際医療センターにおいて、運用実証を行ってきた。
その結果、従来の搬送機械設備(エアシュータや軌道台車)に比べ、導入費用が25%から50%程度、メンテナンス費用が20%程度に抑えられること(松下記念病院の事例から試算)。従来の搬送機械設備のように、経路上で搬送物の上下姿勢を変化させることがないため、検体や発泡性の高い抗がん剤の搬送ができること。薬の臨時処方で期待される搬送時間(地下1階から6階の場合で5分から6分)内の搬送を安定して実現できることなど、病院の経営や日々の運営に大きなメリットがあることが明らかになった。
これからは、病院でロボットがカルテを搬送する光景を目にすることが珍しくなくなっていくかもしれない。(編集担当:久保田雄城)