国境なき医師団日本、シリア向けに使途を指定した寄付の募集を開始

2013年09月23日 09:49

3,000円で、外科手術のための麻酔1回分を用意できる。5,000円で、200人に病気やけがの治療を含む基礎医療を提供することができる。10,000円で、560人の子どもたちに、はしかの予防接種を行える。これらは、シリア難民を救うための金額の一例だ。

 国境なき医師団(MSF)日本は、内戦続くシリアでの医療援助活動の資金不足を補うため、シリア向けに使途を指定した寄付の募集を開始する。寄せられた寄付金はすべて、シリア国内の紛争被害者、および周辺国に逃れて過酷な暮らしを強いられている難民への援助活動に使われる。

 シリアでは、爆撃などによる直接的な紛争被害で10万人以上が犠牲になっただけでなく、保健医療体制の崩壊によって、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱えた患者、妊産婦は行き場をなくしている。また子どもたちへの予防接種は2年間行われておらず、はしかの感染拡大も確認されている。MSFは、シリア国内で援助活動を行う数少ない団体の1つとして、同国北部で6ヵ所の病院と4ヵ所の医療センターを運営し、周辺国におけるシリア人難民支援も行っている。日本からも、2012年4月以降、医師や看護師など15人のスタッフが延べ21回、シリアへ派遣され現地での医療援助活動に従事している。

 MSFは、シリア内戦を巡るあらゆる政治的立場とは一線を画し、活動の中立・公平性を確保するため、民間からの寄付金のみを活動財源としている。しかし、13年の総活動予算4,476万ユーロ(約58億円)のうち、これまでに寄せられた寄付金は1,860万ユーロ(約24億円)で、6割が不足している状況となっている。

 13年4月にシリアへ外科医として派遣されたMSF日本会長の黒崎伸子医師は「内戦の犠牲者は増え続け、膨大なニーズを前に医療は全く足りていません。一人でも多くの命を救うために、私たちの活動にご協力ください」と支援を呼び掛けている。
 
 MSFは、シリア内戦勃発から13年7月末までに、シリア国内で約6万7,000件の診療、3400件の外科手術、1400件の分娩介助、78,000件のはしかの予防接種を提供。周辺国のシリア人難民にも14万件以上の診療を提供している。「シリア使途指定寄付募集」は10月31日までで、オンライン、ゆうちょ銀行、電話にて受け付けている。(編集担当:久保田雄城)