日本の全ての病院に、がん患者に関する情報提供を義務付ける「がん登録推進法案」を今国会に、提出することを自民、公明、民主の3党で大筋合意した。
法案は、がんと診断された患者について診断した病院に、氏名、性別、生年月日、住所、がんの種類や進行度、発見の経緯、治療内容などを届け出るよう義務づけたもの。
治療成績や経過などを蓄積した「全国がん登録データベース」を作り、国内のがん対策を充実させることを狙いとしたものだ。届け出たがん情報は、国立がん研究センターに設けるデータベースに蓄積するとしている。
このデータベースは、市町村からの死亡届とも照合して、更新する。これまでがん登録においては、地方自治体が任意で行っており、政府や関係機関は、がんの発症率・生存率などを推計したデータを用いている。
自治体ごとに内容や制度のバラツキがあり、患者団体は有効ながん対策を講じるために法制化を強く求めている。そうした実情を踏まえ、法案の提出に踏み切ったもの。
がん患者の中には病名を告知されない人もいるが、今回の法案では、全数調査を目的にしているため、がん情報の提供を、個人情報保護法の例外と位置付け、患者本人の同意は、不要にするとしている。
がん情報は、追跡調査できるよう実名で登録し、政令で定める一定の期間を経過した後は、匿名化する。
3党は、他の野党にも賛同を働きかけ、全会一致での成立を目指す。法案は、情報漏えいに罰則を設けるなど、厳格な情報管理を義務づけている。この法案が法制化された場合、関係者が運用に万全を期すのは勿論、医療機関や国民にこの制度の意義を十分に説明して、理解してもらう努力が必要だろう。
超党派議員連盟「国会がん患者と家族の会」(代表世話人尾辻秀久自民党参院議員)の実務者は今国会での成立を目指す。(編集担当:犬藤直也)