日赤(日本赤十字社)は、福島第一原発事故での救護・救援活動の経験や教訓を今後に活かしていくため、「赤十字原子力災害情報センター」(情報センター)を10月に東京・港区の本社内に設置する。
「今後の原子力災害の発生に備えた、赤十字活動のガイドライン策定と普及」および「デジタルアーカイブによる情報蓄積と発信」の二つを柱にした活動に取り組んでいくとしている。
2011年11月の国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)総会で、原子力災害時の被災者支援対策の強化が決議され、昨年5月の「原子力災害対策にかかる関係国赤十字・赤新月社会議」では、各国赤十字社間での情報の蓄積や共有化、被災者支援の国際的なガイドライン策定などが合意された。今回の情報センターの設置は、こうした一連の経過を踏まえたものである。
東日本大震災前まで日赤は、原子力災害時の救護活動を想定しておらず、福島第一原発事故では十分な救護活動を行うことができなかった。こうした反省を踏まえて今年5月に「原子力災害における救護活動マニュアル」を作成し、救護班活動の指針や行動基準を定めた。
情報センターによる「赤十字活動のガイドライン」は、救護班だけでなく、予防から救護・救援、復旧・復興に至るまでのボランティアを含めた幅広い活動を念頭に置いて策定されている。
事前に準備しておく装備や放射線教育、避難が長期化した際の被災者支援のあり方などを含め、今後まとめていくとともに、国際的なガイドラインづくりにつなげる予定。
デジタルアーカイブは、原子力災害に関する各種情報・データを収集し、発信していくもので、福島第一原発事故後の日赤の救護活動の記録や、福島赤十字病院の医師、看護師、他県から派遣された救護班員、支部職員らのインタビューなどが掲載されている。同アーカイブはインターネット上で10月から公開され、本社1階には、情報センターの展示・セミナースペースも設置される。
これらの活動を進めていくため、情報センターは内部、外部に開かれたオープンな活動を重視していくという。国内外の有識者や専門機関と連携し、研究会・セミナーなどを開催する予定で、そこで得られた成果を外部に向けて発信することにも取り組んでいきたいとしている。
個人はもちろん企業でも失敗から学ぶことは重要であることは誰もが知っている。しかし、その“学び”を形にしていくのが大変なこともまた誰もが感じている。そんな中、今回の「赤十字原子力災害情報センター」の開設は賞賛に値することである。(編集担当:久保田雄城)