2020年東京オリンピック開催も決まり、国内の大手ゼネコン(総合建設会社)は、来年以降の東京オリンピック工事の需要が活発化することから、鋼材の発注を前倒しする企業が増え始めた。
こうした好調な建設需要を背景にした動きは、ますます顕著になるものと予想される。その影響もあり、取引価格も一段と上昇するとの見込みから、こうした傾向が今後も続くものと見られている。
主要鋼材H型鋼は、これまで、現場施工の2ヶ月ほど前に使う、大径角型鋼管など、品種によっては半年先の案件が発注されるケースもある。
鋼材の先高観は強く、大手ゼネコンでは、早期に鋼材の発注する傾向が強まっているというのが現状だ。建設分野の8月の鋼材受注高は、101万トンで、前年同期比11%も増加した。また鋼材の全体的な生産能力は伸びていない。新日鉄や神戸製鋼所などは、アジアの供給過剰や、将来的な縮少を見込んで、過度な生産ラインの見直しをしているのが現状と言えよう。
またH型鋼の市中価格は、現在1トン7万6000~7万8000円で、最近最も安かった1月と比較して、12%上昇した。今後も鋼材価格が上昇するとの見方が大勢を占めており、供給側は、早期の受注に対して、消極的な面もみられる。
これは鋼材の加工能力が下がったことが要因だ。来年以降、五輪開催に向けた工事が増えると、建設業界では、人手不足が懸念されると見る向きは多い。こちらの方も深刻な問題となろう。
今後供給側は、長期的な需要動向を重視し、増産には慎重な姿勢を見せてくるのは必至。施工業者の人手不足が浮上すれば、工事の遅れにもつながり、大いに懸念されることになろう。五輪景気に沸く建設業界だが、こうした多くの問題を一方では抱えているのだ。(編集担当:犬藤直也)