モーターショーとかオートショーなど呼称は違うが、世界各国で開催されるこうした自動車の国際的な展示イベント会場ブースでメインを張れる“華”のある役者は、やはりショー直後に現実デビューするスポーツモデルだろう。
11月23 日から開幕した第43回東京モーターショーでもっとも華やかだったクルマはコレだ。「JAGUAR F Type Coupe」。これまでFタイプはコンバーチブルだけのモデル展開で日本では、この5月から発売されている。
ジャガー&ランドローバーの決して広くないブースは、プレスデー初日の朝からプレスの面々でごった返していた。今回発表となったモデルはクローズドボディのクーペで、世界初公開だ。まず、スポーツクーペとしてのデザインレベルが違う。素直に「カッコいい」のである。国内メーカーがいくら頑張っても、このレベルに到達するには半世紀、あるいは四半世紀ほどは必要であろうとさえ思える。
スポーツクーペの古典的な文法である「ロングノーズ・ショートデッキ」に回帰したレイアウト。加えてぎりぎりまで切り詰めた短いリアオーバーハング。長いノーズから立ち上がるAピラーからルーフに至る、いかにも「動物“ジャガー”の構え」を彷彿させる造形はジャガーらしさに溢れている。この「構え」の印象を協調するのが極端に短いリアオーバーハングで、排気系を収めるためのギリギリの寸法にして、このデザインが完成したという。そのためラゲッジは狭小で315リッターだ。しかし、こうした割り切りが優れたデザインを生み、優れた運動性能が得られるということ。それでも、妙な比較だが、ラゲッジはマツダ・ロードスターの倍以上はあるということ。
「んっ、リアオーバーハングが短いと、運動性能が上がる理由?」ですか。それは、リアタイヤよりも後ろに重量物がない方が物理学的にコーナーを曲がるときに有利になるからですね。
ボディモノコックは最新ジャガーの定石であるオールアルミニウム製で、非常に高いボディ剛性を得ているのはいうまでもない。
また、このFタイプRクーペには、コンバーチブルにはない強力な心臓が与えられた。5リッターV8気筒スーパーチャージャーである。最高出力は550ps(404.5kW)/6500rpm、最大トルクは69.4kg.m(680Nm)/2500-5500rpmという圧倒的なアウトプット。0-100km/h加速をわずか4.2秒こなし、最高時速300km/hでリミッターが作動する。ボディサイズは全長×全幅×全高4470×1923×1321mm、ホイールベースは2622mmとなっている。タイプクーペとFタイプSクーペはチューンの異なるV型6気筒スーパーチャージャーを搭載する。
すべてのグレードは後輪駆動であり、2ペダル8速クイックシフトを採用。ステアリングに備わるパドルでマニュアルシーケンシャル変速が可能だ。このスーパースポーツ、アクティブな運動性能以外の安全装備や快適性能でも不足や不満があるはずも無い。(編集担当:吉田恒)