尖閣諸島上空周辺を含む、東シナ海に中国が防空識別圏(ADIZ)を設定した問題を巡って、ANAホールディングス<9202>と日本航空(JAL)<9201>は27日、中国当局への飛行計画の提出を取りやめると発表した。今回中国側が設定した防空識別圏を通過する路線は、ANAで1日27便(貨物便を含む)、JALで1日10便あり、これまではそれらの便は予定通り運航されている。
ANAホールディングスと日本航空は、23日に中国政府が防空識別圏を設定したことを受けて、台湾や香港行きなど、その圏内を運航する航空機に関して、中国当局に飛行計画の提出を行っていた。
しかし25日、日本側が中国の程永華駐日大使に抗議を行い、従来通りの運用を行っていくと通告したところ、程永華駐日大使から「今回の防空識別圏の設定は、民間航空機を含めて、飛行の自由を妨げるものではない」と回答を受けた。国土交通省はこの程永華駐日大使の回答から安全の担保が得られたと判断し、翌26日、中国当局に飛行計画を提出しないよう、国内の各航空会社へ要請を行っていた。
また安倍晋三首相は26日に国会内の会合にて、「力により現状変更を試みる行為であり、断固として受け入れることは出来ない。国際社会と連携しつつ、国際社会のルールにのっとって行動するように、中国へ呼びかけたい」とコメントした。
こうした国からの飛行計画の提出中止の要請を受け、国内の各航空会社で構成される業界団体は、協議を行い対応を検討した。その結果、国からの要請に従い、中国当局への飛行計画の提出を中止することを決定した。そして27日、ANAとJALはそれぞれ自社のウェブサイト上にて、飛行計画の提出を取りやめた経緯を説明しつつ、関係当局と連携しながら安全運航に努めるとのコメントを発表した。
こうした国からの「飛行計画の提出中止要請」に関して、実際に航空会社を利用する人たちの間からは、「不安は感じている」との声もあるものの、しかしそうして日本政府が中止要請を行ったことに関して、「日本政府としては仕方がない部分もある。提出に関して何も言わなければ、今回の中国の行動を認めることになってしまう」といった声もあるようだ。(編集担当:滝川幸平)