【日経平均】伊藤隆敏教授発言が円安、株高を招き122円高

2013年12月06日 20:13

 5日のNYダウは68ドル安で5日続落。第3四半期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期比3.6%増。新規失業保険申請件数ともども市場予測を上回り、本丸の6日の雇用統計発表前に良い指標ばかり出て「今月のFOMCで量的緩和縮小開始か」という憶測は強まるばかりで金融株中心に株価が下落した。6日朝方の為替レートはドル円が101円台後半、ユーロ円が139円近辺。ECB定例理事会は政策金利を据え置き、新たな長期資金供給オペ(LTRO)も行われずドラギ総裁が弱気の経済見通しを示してもユーロは買われたが、ドルに対する円高は進んだ。

 2日間で572円も下げた日経平均は64.95円安の15112.54円と続落して始まる。それでも押し目買いのチャンスと思われたか「寄り安」で上昇し、午前9時30分前から急上昇して前日終値を突き抜け、9時54分には79円高の15257円まで上がった。しかし10時台は一転してマイナス圏まで下落。ドル円が102円に届きそうで届かず、先物買いが息切れしたような感じだったが、それでもプラス圏の15200円台まで戻して前場は22円高の15203円で終えた。

 しかし「利益確定売りの金曜日」ゆえ「小春日和」とはいかないようで後場寄り早々に再びマイナスまで急落し、1時台には15130円に近い水準まで下落。それでも1時30分頃からは102円台に戻したドル円の動きに連動してプラスに浮上し、2時台はさらに上値を追って大引け前には15300円台に乗せる。その要因は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用をめぐる有識者会合の座長を務めた伊藤隆敏東大大学院教授の発言で、「GPIFは運用資産の6割を占める国内債券の一部を直ちに売却し始めるべきだ」という踏み込んだ内容がブルームバーグで伝わった。これで債券が売られて為替は円安・ドル高に振れ、日経平均は切り上がった。終値は122.37円高の15299.86円と3日ぶりに反発したが、2勝3敗、前週末から362.01円下落して今週の取引を終えた。TOPIXは+6.18の1235.83。売買高は20億株。売買代金は1兆9583億円で、アメリカの雇用統計待ちもあり2兆円を割り込んだ。

 東証1部の値上がり銘柄は947、値下がり銘柄数は637だが、33業種別騰落率のマイナスは鉱業、その他金融、その他製品の3業種だけ。プラス業種上位は精密機器、金属製品、電気・ガス、保険、機械、倉庫など。下位は情報・通信、食料品、不動産などだった。

 日経平均採用225種は170銘柄が上昇し41銘柄が下落。プラス寄与度上位は「御三家」の間の3位に採算改善で来期の損益分岐点売上高を約200億円引き下げると報じられ75円高で値上がり率7位に入ったアドバンテスト<6857>が割り込み、4銘柄合計で+36円。マイナス寄与度上位は1位がKDDI<9433>で-3円、2位がトレンドマイクロ<4704>で-1円だった。

 メガバンク、証券大手はみずほ<8411>1円高、三菱UFJ<8306>値動きなし、三井住友FG<8316>25円高、野村HD<8604>4円高と伸び悩んだ。

 電機のパナソニック<6752>は、現地に家電開発拠点を設置して35000店舗の「インド版パナソニックショップ」ネットワークを構築するというインド戦略を発表して34円高で売買代金13位。日本の高度成長期と同じようなやり方で中間所得層を開拓する。当時は前橋市の一介のナショナル店会電器店だったヤマダ電機<9831>は、1坪20万円台の格安の注文住宅を販売し年間130億円を受注すると報じられて2円高。買収した住宅メーカー、ヤマダ・エスバイエルホーム<1919>は5円高だった。シャープ<6753>は8円高で売買高2位、売買代金8位。ソニー<6758>は14円高だった。

 安川電機<6506>はバークレイズが「オーバーウェイト(強気)」の新規レーティング、1600円の目標株価をつけて76円高で値上がり率9位。富士フイルムHD<4901>はアルツハイマー治療薬の臨床試験実施が報じられて109円高と買われた。ドラッグストアのクスリのアオキ<3398>は前日に通期の営業利益見通しを44.9億円から52.8億円に上方修正し、業績改善がサプライズで840円高で値上がり率1位になった。178円高で値上がり率6位のぐるなび<2440>は、岩井コスモ証券が和食の無形文化遺産登録も加味して来期は3割増益と予想し投資判断を引き上げた。一方、「メガネのユニクロ」ことJIN<3046>は11月の全店売上高が4.6%減と上場以来初の減少で、既存店ベースでは24.5%の大幅減だったのが嫌気され175円安。値下がり率6位に甘んじた。

 政府が「新エネルギー基本計画」で原発を重要なベース電源とする見解を示すという報道があり、再稼働近しという観測で電力株、原発関連銘柄が買われた。東京電力<9501>は2円高だったが、関西電力<9503>は50円高で値上がり率18位。原発関連の日本製鋼所<5631>は20円高、木村化工機<6378>は30円高で値上がり率5位だった。

 がんや重症感染症を対象とする創薬事業を行っているオンコリスバイオファーマ<4588>が東証マザーズに新規上場。公開価格2600円に対し9時58分に3500円の初値がついた。公開価格よりも34.6%高く「公開価格<初値」は43連勝となった。

 この日の主役はこのところパッとしなかった自動車関連銘柄。後場の伊藤教授発言による円安でいっそう元気づき、ホンダ<7267>は50円高、富士重工<7270>は30円高、日産<7201>は17円高、三菱自動車<7211>は9円高、マツダ<7261>は6円高。前日は軽自動車課税強化で下げたスズキ<7269>も17円高と株価を戻した。この日はマツダがタイに工場を建設して東南アジアに得意のエコカーの新技術を供給するというニュースがあった。しかしトヨタ<7203>はこんな地合いでもなぜか値動きなし。販売は国内も海外も好調で業績にも財務にも問題はなく、トヨタの株価上昇を阻んでいる「何か」があるのではないかと思いたくなるような株価の動きが続いている。(編集担当:寺尾淳)