4日のNYダウは24ドル安で4日続落。12月のFOMCでの量的緩和縮小開始を意識して、ADP雇用統計が市場予測を上回る改善を見せると安く始まったが、ISM非製造業景況指数が53.9で前月から低下し市場予測も下回り、ベージュブック(地区連銀経済報告)も雇用懸念のトーンが強いとプラスに浮上。しかし午後はまたマイナスに沈みプラスに戻りきれなかった。5日朝方の為替レートはドル円102円台前半、ユーロ円139円近辺で、前日夕方から若干円高になっていた。
日経平均は53.41円安の15354.53円で始まる。午前9時台前半はプラスに浮上し15430円まで上がったが、その後は行きつ戻りつの下落が続き10時29分には15300円を一瞬割り込む。そこから下げ幅を圧縮し前引けは15365円。昼休みにドル円が10銭程度円安方向に進んだのを受けて後場いきなり上昇をみせ15400円にタッチするが、プラスに浮上しそうでしないまま15350円近辺に下げ、1時間ほどもみあう。ところが午後1時45分頃から下落が始まり、15300円、15250円を割り込んで2時7分には15232円まで下げた。少し戻したが2時30分を回ると15200円もあっさり割り、下落がなかなか止まらず15139円でようやく底を打った。
急落の原因として考えられたのが「年収1000万円超の会社員、所得控除縮小を検討」という1時に出た日経の速報。税制改正の政府案で、年収1500万円なら年間7~11万円の税負担増になるという。該当する人口は172万人と少なくても、現役世代で個人消費は旺盛で株式保有の比率も高いのでマーケットへのインパクトは決して小さくない。この増税案が為替を巻き込んだ先物売りを呼び込み、ドル円は2時台に一時102円を割った。日経平均は15200円台に戻らず終値は230.45円安の15177.49円で、日中値幅291円という激動の一日だった。ザラ場中の年初来高値や16000円へのチャレンジどころか2日間で572円も下落し、まさに一寸先は闇。TOPIXは-11.34の1229.65で終えた。売買高は24億株、売買代金は2兆4384億円で、2日続けて日本株は売り浴びせられて商いが活発になるという皮肉な相場だった。
値上がり銘柄は352、値下がり銘柄は1303で73.8%を占める全面安だったが、業種別騰落率では3業種がプラスだった。その他金融、情報・通信、空運で、それぞれに派手な逆行高銘柄があった。マイナスの30業種で下落幅が小さいのは鉱業、食料品、金属製品など。大きいのは倉庫、ゴム製品、陸運、機械、保険、パルプ・紙などだった。
日経平均採用225種は値上がり14銘柄、値下がり208銘柄。プラス寄与度1位は160円高で年初来高値更新のソフトバンク<9984>が突出して+18円、2位はバークレイズがレーティングを引き上げた東京建物<8804>で+0.67円だった。マイナス寄与度1位、2位は1200円安のファーストリテイリング<9983>と320円安のファナック<6954>で、合計-59円だった。
金融も証券も自動車も電機も主力株は総崩れ。自動車関連で悪い意味で注目されたのが軽自動車で、日経朝刊1面に「軽自動車税引き上げ」という見出しが躍った。2015年10月までに保有税7200円を数千円引き上げ、代わりに小型登録車の税額29500円を引き下げる。「年収1000万増税」と同じように「税金は取りやすいところから取る」手口で、軽がメインのスズキ<7269>は49円安、ダイハツ<7262>は38円安と朝から売り先行。三菱自動車<7211>は22円安、ホンダ<7267>は35円安だった。後場に11月の車名別新車販売台数が発表され、1位はホンダの「フィット」だったが上位10台中6台を軽が占めた。日本独自の「軽」規格は「ガラケー」同様、日本の事情にうまく適応した無形文化遺産のようなもの。「チューハイ」もそうで、キリンHD<2503>が40億円を投資しビール系の工場で生産すると伝えられたが9円安だった。安い缶チューハイも「酒税を取りやすい」と政府に狙われている。
明治HD<2269>は中期経営計画の達成が見込めるという評価で野村證券がレーティングを「買い」に引き上げ140円高。北陸電気工業<6989>は電気自動車用の小型・低コストの高機能電力センサーを開発と報じられ19円高で値上がり率1位。同3位にはバイオ関連の澁谷工業<6340>が116円高で久々に顔を見せた。スカイマーク<9204>はモルガンスタンレーが投資判断を引き上げて23円高で値上がり率4位に入り、20円高のJAL<9201>とともに空運セクターをプラスに押し上げた。ローム<6963>もメリルリンチが投資判断を引き上げて75円高。来期の営業利益を前期比33%増益の314億円に上方修正している。ドワンゴ<3715>は相変わらずの人気で83円高で売買代金2位。日立金属<5486>はSMBC日興証券が目標株価を引き上げ10円高になっていた。
第一三共<4568>は、子会社の第一三共ヘルスケアのスキンケア化粧品「ダーマエナジー」で肌トラブルが続発して販売中止を決めるという出来事があり49円安。コマツ<6301>は32円安で7日続落と深刻。ヤマトHD<9064>は120円の大幅安で値下がり率6位に入っていた。
大幅安の東証1部を尻目に新興市場が盛り上がり、東証マザーズ指数は+26.86。リードしたのはネット&ゲーム関連銘柄で、ガンホー<3765>1000円高、コロプラ<3668>168円高、サイバーエージェント<4751>は55円高で年初来高値更新。ストップ高の705円高、年初来高値更新のミクシィ<2121>はコマツと正反対の7日続伸で、その間に株価は2.8倍になっている。
この日の話題は「和食」。未明にアゼルバイジャンのバクーで開かれているユネスコの政府間委員会で、「和食・日本人の伝統的な食文化」のユネスコ無形文化遺産への記載(登録)が決まった。和食レストランの銘柄は、「和食さと」のサトレストランシステムズ<8163>は2円高、「まるまつ」のカルラ<2789>は4円高だったが、「権八」のグローバルダイニング<7625>は値動きなし、「源ぺい」のフレンドリー<8209>と「ザめしや」のライフフーズ<3065>は2円安、「梅の花」の梅の花<7604>は6円安と株価はまちまちで反応薄だった。「京都連合」を組んで登録に向けて尽力した京懐石の「美濃吉」は非上場。懐石料理ならともかく、うどんや天ぷらやしゃぶしゃぶや回転寿司や居酒屋は、いくら何でも無形文化遺産の対象外だろう。(編集担当:寺尾淳)