【日経平均】「ボルカールール」が急落の嵐を呼び341円安

2013年12月04日 20:30

 3日のNYダウは94ドル安で3日続落し16000ドルの大台を割り込んだ。11月の新車販売台数が悪くなくてもフォードやGMが売られるようでは、8週連続で上昇したNYダウもトレンド転換の年貢の納め時か。6日の雇用統計が悪くなければ17~18日のFOMCで量的緩和縮小が始まるという見方が日々有力になっている上に、金融機関の自己勘定での投機的取引を禁止しヘッジファンドにも影響が及ぶ「ボルカールール」まで忘れた頃にいきなり飛び出した。最終案が10日に採決されるという。4日朝方の為替レートは、ドル円は102円台前半、ユーロ円は140円タッチ後に折り返して139円近辺で、どちらも前日比で円高が大きく進んでいた。

 CMEの日経225先物清算値は15555円。欧米の株安、円高による嵐の予感を感じさせながら日経平均は229.46円安の15520.20円で始まる。ドル円が102円50銭を上回ったこともあり午前9時台はCME清算値付近での小動きが続いたが、それも「嵐の前の静けさ」。10時になると風向きが一変し、日経平均は15500円を割り込み、上海、香港市場が下落でスタートするとたちまち15400円も割って、10時33分の15326円まで30分余りで250円近い急落を喫した。その間のドル円の円高進行は20銭程度で、いきなり前倒しになった金融規制強化を懸念して海外のヘッジファンドが高値圏の日本株から投資資金の引き揚げを始めて、「ボルカールール暴落」が起きたという見方がもっぱらだった。

 嵐が過ぎると前場は15300円台後半で推移した後、15400円台に戻して前引けは15426円。ドル円が再び102円50銭を超え、後場も15400円台を堅持して波乱もなく過ぎていたが、午後2時台には少し下げて15400円を割り込む時間も出る。それでも終盤に少し値を戻していたおかげで大引けでは15400円台を堅持し、終値は341.72円安の15407.94円。日中値幅は253円もあった。TOPIXは-21.55の1240.99。売買高は25億株、売買代金は2兆3876億円だった。

 値上がり銘柄199、値下がり銘柄1483という掛け値なしの全面安。プラスのセクターは鉱業1業種のみ。マイナスのセクターで下げ幅が小さかったのは鉄鋼、電気・ガス、小売、空運、陸運など。下げ幅が大きかったのは保険、証券、その他金融、パルプ・紙、その他製品、ガラス・土石などだった。

 日経平均採用225種で値上がりは10銘柄だけで値下がりは213銘柄。プラス寄与度1位はコナミ<9766>、2位は国際石油開発帝石<1605>だが、わずかに+0.20円と+0.11円。マイナス寄与度1~3位には「御三家」が勢揃いして合計-63円だった。ファーストリテイリング<9983>は11月の国内ユニクロ既存店売上高が7.7%増で10月のマイナスから持ち直したが750円安。ソフトバンク<9984>は傘下のイー・アクセスとウィルコムの合併を発表したが460円安だった。

 大幅安の引き金が金融規制の話なのでメガバンクも証券も壊滅状態。自動車も電機も主力銘柄は軒並みマイナスで、中国での11月の新車販売が前年の約2倍だったホンダ<7267>も日産<7201>も下落。東芝<6502>は破たんしたアメリカのOCZ社からSSD事業を買収するニュース、ドイツで太陽光発電の電力小売に参入するニュースがあったが10円安。日立<6501>は再生可能エネルギーの電力の安定供給を支える蓄電システムを開発したニュース、アメリカのビル空調設備大手ジョンソンコントロールズ社と合弁で新会社を設立するニュースがあったが17円安。ソニー<6758>は「PS4」の販売台数が210万台を突破したニュース、閉鎖予定のルネサスエレクトロニクス<6723>の山形県・鶴岡工場を買収しスマホ用カメラセンサーの生産拠点にするというニュースがあったが65円安。ルネサスは3円高だった。

 2013年の世界出荷額が約29兆円で過去最高と報じられた半導体関連は、キヤノン<7751>の子会社が次世代メモリーの生産能力を5倍にする量産装置を開発したが本体はJPモルガン証券がレーティングを下げて65円安。電子ビームマスク描画装置で世界シェア首位のニューフレアテクノロジー<6256>は、三菱UFJ証券が新規に好レーティングをつけて540円高と買われた。

 カナダのブリティッシュ・コロンビア州のクラーク首相が「2016年末にも日本にLNGを輸出できる」と表明。同州でシェールガスの開発・生産プロジェクトに参画する石油資源開発<1662>は25円安だったが、11月にカナダのシェールガスLNG事業化調査権を取得と発表した国際石油開発帝石は7円高で、鉱業を唯一の上昇業種に引き上げた。

 LINE関連のマーベラスAQL<7844>はテーマ物色され26円高。ドワンゴ<3715>は131円高で値上がり率10位、売買代金7位。ベイエリア含み資産銘柄の日本冶金<5480>は14円高で値上がり率12位、売買高8位。椿本チエイン<6371>はクレディスイス証券がレーティングを引き上げ値上がり率9位の35円高で年初来高値を更新した。

 前日に2015年のNHK大河ドラマが正式お披露目。舞台は山口県萩市だが地元地銀の山口FG<8418>は19円安。近鉄<9041>グループのバス会社の防長交通が萩市内で観光ホテル、タクシー会社を経営するが近鉄も2円安。2013年の大河ドラマの経済効果は日銀福島支店が113億円と試算しているが、両銘柄とも全く反応しなかった。

 地合いが悪い中、ディフェンシブ系の小売や外食は健闘。真珠販売のTASAKI<7968>は続伸し55円高で年初来高値を更新し値上がり率3位。吉野家HD<9861>は5円高で年初来高値を更新。楽天<4755>は12円高で東証1部に移って2日目で初めての上昇。ヤフー<4689>も4円高だった。

 この日の主役は株価は15円安だが話題性でセブン&アイHD<3382>。前日はニッセンHD<8248>の買収で話題を呼び、この日はアメリカの高級衣料店バーニーズの日本法人の出資比率を49.9%に高めるという報道があった。TOBをかけるニッセンHDは22円高と続伸し値上がり率5位だった。2013年の「日経MJヒット商品番付」でセブンイレブンの入れたてコーヒー「セブンカフェ」が東の正横綱に推挙されるなど足元の業績は好調で、潤沢な手元資金を使い矢継ぎ早のM&A攻勢に出ている。アメリカのクリスマス商戦の緒戦を見てもわかるように、セブン&アイHDの「仮想敵」はリアル店舗の百貨店、スーパー、コンビニ、専門店よりも、ネット通販という〃見えざる敵〃だろう。