【日経平均】ドル円103円台で94円高でも全面高に非ず

2013年12月03日 20:22

 2日「サイバーマンデー」のNYダウは77ドル安。ISM製造業景況感指数は57.3で前月比0.9ポイントの上昇で市場予想を大きく上回り、正午すぎは16100ドル超えのプラス圏だった。しかし、ネット通販は好調でも百貨店などリアル店舗のクリスマス商戦の出足伸び悩みが判明し、今年のノーベル賞を受賞したシラー教授が「経済は依然脆弱なのに株価の過熱を懸念している」と述べ、さらに3Mの株価急落にも引きずられて午後はズルズル下げて一時16000ドルを割り込み、取引終了直前にかろうじて大台キープ。インフレ率2%の目標達成に自信をのぞかせつつ追加緩和の可能性も匂わせるという絶妙な話芸を発揮した前日の黒田日銀総裁の発言が功を奏し、ロンドン時間にドル円は5月以来の103円台にタッチ。3日朝方の為替レートはドル円は103円近辺、ユーロ円は139円台前半だった。

 円安を織り込んで日経平均は92.47円高の15747.54円で始まる。10分ほどで15700円を割り込むが、それでもマイナスにならずに折り返し午前9時30分までに15700円台を回復した。10時前に15750円にタッチし、ドル円が103円台に戻ると10時17分に15779円まで上昇。その後も15700円台を堅持したままに前引けになった。

 後場は15700円台半ばの水準での高値もみあいが続く。ドル円103円30銭台まで円安が進み、午後1時29分には15800円まであと6円の15794円まで上昇した。その後は15750~15770円の小動きだったが大引け間際に20円ほど下げ、終値は94.59円高の15749.66円。日経平均は3日ぶりに反発し終値ベースの年初来高値を更新し、TOPIXは+3.60の1262.54と続伸した。売買高は26億株、売買代金は2兆4158億円で、感謝祭休暇明けの海外勢も復帰して大台に乗せた。

 東証1部全体では値上がり銘柄数786よりも値下がり銘柄数828のほうが多く、業種別騰落率もプラス21対マイナス12で、日経平均94円高でも全面高と言いがたい状況。上昇セクター上位はパルプ・紙、ゴム製品、情報・通信、保険、医薬品、水産・農林など。下落セクター下位は電気・ガス、空運、不動産、海運、その他金融、非鉄金属などだった。

 日経平均採用225種も値上がり131に対し値下がりは79もあった。プラス寄与度1位はソフトバンク<9984>で+42円と上昇幅の44.8%を占め、メリルリンチが目標株価を10000円に引き上げ360円高で年初来高値を更新し売買代金1位。2位はプラントの日揮<1963>で+3円。マイナス寄与度1位はカジノ関連で買われていたコナミ<9766>で-2円。コンゴの日本大使館に放火した外務省職員がカジノに入り浸っていたという報道がカジノ法案にはマイナス材料か。ちなみに前会長がカジノに入り浸っていた大王製紙<3880>は15円高。2位はそのスキャンダル同期生のオリンパス<7733>で-1円。

 メガバンクは尻すぼみで三菱UFJ<8306>2円高、三井住友FG<8316>値動きなし、みずほ<8411>1円安。野村HD<8604>も2円高どまり。不動産は三井不動産<8801>40円安、三菱地所<8802>16円安、住友不動産<8830>35円安と軟調だった。

 ドル円103円の円安でもトヨタ<7203>20円高、ホンダ<7267>5円安、富士重工<7270>4円高、マツダ<7261>8円高と自動車大手の株価は反応薄で、ASEAN最大の自動車生産拠点タイの反政府デモが続く政情不安が影を落としている模様。電機はシャープ<6753>は4円安でもソニー<6758>12円高、パナソニック<6752>20円高、NEC<6701>4円高とおおむね堅調。積水化学工業<4204>は自動車用リチウムイオン電池の蓄電容量3倍、走行距離3倍、コスト6割減になる新材料を開発と日経新聞朝刊1面で報じられ、90円高で年初来高値を更新し値上がり率5位、売買代金8位に入った。河合楽器<7952>は岡三証券が投資判断を引き上げ8円高。評価されたのは楽器ではなく自動車用CVT部品の金属加工だった。

 前日、決算発表を行ったピジョン<7956>は中国など海外で販売好調で、通期の経常利益見通しを14億円上方修正。前期比44.8%増で3期連続最高益を見込み60円高。大日本住友製薬<4506>はヘリオス(旧・日本網膜研究所)とiPS細胞由来の細胞医薬品の共同開発契約を締結したニュースがあり20円高。加齢黄斑変性など眼科疾患薬で製造販売承認取得を目指す。ユーグレナ<2931>は1月から中国でミドリムシ食品の販売に乗り出すと報じられ128円高になった。

 M&Aを支援する「メザニンファンド」の設立を好感され東京海上HD<8766>は45円高。WOWOW <4839>はフジメディアHD<4676>による70万株追加取得を材料に80円高になり、フジメディアHDは14円安で、「M&Aは小さいほうの株価が上がり、大きいほうの株価が下がる」という原則通り。カタログ通販のニッセンHD<8248>はセブン&アイHD<3382>の子会社セブン&アイ・ネットメディアに買収されると報じられストップ高比例配分の80円高で値上がり率1位。セブン&アイHDは値動きなしでこれもほぼ原則通り。ファッション関連の通販銘柄は、ニッセンと同じ業態のベルーナ<9997>は13円高、昭和の時代の職域販売以来の古参の「ベルメゾン」の千趣会<8165>は6円高。ネット通販「ゾゾタウン」のスタートトゥデイ<3092>は120円高だった。

 宅配寿司「銀のさら」、宅配釜めし「釜寅」のライドオン・エクスプレス<6082>が東証マザーズに新規上場。公開価格2000円に対し10時46分に3105円の初値がついた。「公開価格<初値」の連勝記録は42に伸びたが、上場初日に初値がつかない連続記録は7でストップした。本日付で楽天<4755>がジャスダックから東証1部に指定替え。時価総額はソニーより大きい2兆円で次期日経平均採用候補の呼び声高い「超大物転校生」の初日は、始値は値動きなし、直後に2円高になった後、ザラ場中ずっとプラスになれそうでなれず終値は2円安とおとなしかった。

 この日の主役は冬の流行期を迎えたインフルエンザ関連銘柄。香港在住の36歳のインドネシア人女性が、深センで買った生きたニワトリを調理して食べて鳥インフルエンザ(H7N9型)に感染したことを確認したと香港政府が前日発表。入院中のその患者は重態という。東京市場は敏感に反応し、抗ウイルス消毒液「クレベリン」が医療機関だけでなく一般家庭でも普及している大幸薬品<4574>は255円高で年初来高値を更新し値上がり率2位。マスク素材のダイワボウHD<3107>も9円高で年初来高値を更新し売買高7位と買われた。インフルエンザと言えば富山化学の「T-705(ファビピラビル)」が連想される富士フイルムHD<4901>も84円高で年初来高値を更新したが、肝心の製造販売承認は2年半も棚ざらしのまま。〃テロリスト〃呼ばわり覚悟で厚生労働省に向けてデモ行進をすれば情勢は変わるだろうか。(編集担当:寺尾淳)