2013年の初夏。日本の携帯市場に異変が起こった。携帯キャリア各社いずれもが、13年の夏モデルとして、ガラケー、いわゆるフィーチャーフォンの新機種を一台たりとも発売しなかったのだ。みまもりケータイなど、用途の特殊なものや既存モデルの新色などは一部発売されたようだが、それを除けばフィーチャーフォンは売り場の新機種コーナーか一時完全に姿を消してしまったのだ。代わりに4キャリア合わせて計21機種もの新型スマートフォンが市場に投入され、いよいよフィーチャーフォン時代が終了するのかと思いきや、夏以降には再び新機種も次々に発表されて、終わるどころか、徐々にフィーチャーフォンが息を吹き返してきた感さえある。
MM総研が10月に発表した「スマートフォン市場規模の推移・予測」によると、2013年9月末の時点で、スマートフォン契約数は5,015万件となっており、ついに5,000万件を突破した。同じくフィーチャーフォンの契約数は6,862万件。いまだ従来型のフィーチャーフォンの契約者数が勝るものの、2014年度中にはスマートフォン契約数が過半数に達する見通しだという。とはいえ、その一方でスマートフォンの伸び悩みを指摘する声も聞かれた。同調査でも、3月時点で行った同様の調査で予測したスマートフォンおよび全体の携帯電話出荷台数を年間約200万台下方修正している。MM総研はその理由としてフィーチャーフォン利用者から移行する人のピークが過ぎたことや、スマートフォンユーザーの機種変更の需要が減少していることを挙げているが、その他にも、スマートフォンからフィーチャーフォンに戻る人が増えていることも大きいと考えられる。
スマートフォンは多機能だが、それだけに使い勝手が悪い面もある。スマホユーザーの中には、機械の反応が良すぎて、メールや電話を誤送信してしまった経験がある人も少なくないだろう。また、通話料やパケット通信料が高いこと、LTE機種になると従来の無料通話プランなどが使えなくなることなども問題点として挙がっている。各キャリアではこれらの問題に対し、インターネットを共通で契約することによって料金を割引するようなサービスプランを提案したりしているものの、今度はそのプラン自体が複雑化し過ぎてユーザーの理解や共感を得られていないことも多いようだ。さらに、月々の通話料金の見直しを相談すると、フィーチャーフォンとの2台もちを勧められたり、フィーチャーフォンとタブレットの組み合わせを勧められたりすることも多いという。
企業で社員が使う社用の携帯電話も、スマートフォンの利便性を積極的に取り入れる企業と、セキュリティや経費的な問題などから、スマートフォンの導入に消極的な企業との二極化が進んだのも、2013年の特徴といえる。
iPhoneから始まったスマートフォンブームも、ようやく落ち着きをみせ、これからが正念場だといえるだろう。このままシェアを伸ばしてフィーチャーフォンユーザーを取り込んでしまうのか、それともフィーチャーフォンへの回帰が進むのか、もしくは、フィーチャーフォンが日本独自の進化を遂げて「ガラケー」と呼ばれたように、スマートフォンにも世界基準から一人歩きした「ガラスマホ」が生まれるのか。
さらにはここに、「Google Glass」や「iWatch」に代表されるウェアラブル端末がいよいよ本格的に、ポストスマホとして市場に投入されそうな気配を見せている。14年のモバイル市場は、混沌としたシェア争いになりそうだ。(編集担当:藤原伊織)