【証券業界 2013年の振り返り】日経平均56.7%上昇の記録的な株高の年は、東証と大証の統合が進んだ節目の年

2014年01月05日 17:17

 日経平均の年初からの上昇率が56.7%になり、記録的な戦後4番目の株高の年となった2013年の証券界は、1月1日付で東京証券取引所と大阪証券取引所が合併し「日本取引所グループ(JPX)」<8697>が発足したことから始まった。ジャスダック上場の大証株を受け継いだJPX株は1月4日の大発会で東証1部に上場。7月16日には東証と大証の現物株市場が統合し、大証1部・2部単独上場銘柄が東証1部・2部に合流して、大証傘下のジャスダック市場は東証ジャスダック市場に衣替えした。

 東京証券取引所によると、2013年1年間の東証1部の売買高(外国株、優先株除く)は大証銘柄の合流もあって8416億3901万株で市場開設来最高になった。売買代金は639兆9515億円で2007年、2006年に次ぐ第3位の記録だった。2012年と比べると売買代金は2倍を超え、新興市場のマザーズの売買代金は前年比約8.5倍に膨らんだ。証券会社の主要な収入源である株式の売買手数料収入は売買代金に比例するので、単純に言えば証券業界の収入は前年の2倍以上に増加し、まさにホクホクの1年になった。

 それは証券会社の決算を見ればよくわかる。9月中間期(4~9月)決算の四半期純利益を前年同期と比較すると、大手の野村HD<8604>は22.1倍、大和証券G<8601>は9.2倍になり、4大ネット証券のSBIHD<8473>は8億円の赤字から185億円の黒字に転化し、マネックスG<8698>は5.3倍、カブドットコム証券<8703>は5.6倍、楽天証券(楽天<4755>傘下で非上場)は6.0倍という、兜町に中小証券のわびしい廃業話が飛び交っていた1年前と比べればまさに「異次元」の好業績をあげた。

 日銀の「異次元金融緩和」決定翌日で売買高64億株、売買代金4兆8633億円という空前の大商いを記録した4月5日、立花証券(非上場)で2007年以来6年ぶりに社員に「大入袋」が配られて話題になったが、5月10日にはカブドットコム証券が全社員に30万円の臨時ボーナスを支給。夏冬のボーナスは各社とも大盤振る舞いして、長い低迷期に踏ん張ってきた社員たちに報いている。

 その証券界で2013年最大の話題と言えばNISA(少額投資非課税制度)の制度が固まり口座開設の受付が始まったことだろう。株式や投資信託の売却益、配当、分配金の本来の税率20%を10%に引き下げていた証券優遇税制が2013年末で打ち切られる代わりに、2014年1月から20歳以上の個人1人年間100万円までの非課税枠つきの口座を設けるという制度。1人1口座しか開設できず当初は4年間、金融機関を変更できないとアナウンスされたので、夏頃からキャッシュバックのような開設特典をつけて証券会社と銀行等とのNISA口座争奪戦が始まった。日経新聞の聞き取り調査によると、2013年末までに開設見込みも含めて400万件を超えるNISA口座が開設されたという。

 大手証券会社では収益構造の多様化が進み、売買手数料収入以外の収入が拡大しているが、自己売買部門は株高でかなりの運用成績をあげている。引受・募集・売出部門も株高を背景に企業のエクイティファイナンスの意欲が増して、新規IPO、公募増資、売出しなどが活発化。それに伴い手数料収入が増加している。投資信託の新規設定も2013年は公募追加型がNISAのスタートを前に809本と過去最高を記録し、傘下に投資信託の運用会社を抱えている証券会社は、その信託報酬からもグループ収入が得られた。そんな、まさに「株高は全てを癒す」という1年だった。(編集担当:寺尾淳)