【証券業界 2014年の展望】NISAと「JPX日経400」をきっかけに2014年は「投資信託元年」になるか

2014年01月06日 07:24

 証券業界の2014年は、NISA(少額投資非課税制度)のスタートと、株式の売却益や配当に対する税率が2倍の20%になったところで始まる。実際は12月26日取引分から税率20%が適用され、NISA口座への受け入れが始まっている(一部の証券会社を除く)。1月6日から新株価指数「JPX日経400」の算出が始まるが、日経平均やTOPIXと並ぶメジャー指数になれるかどうかは未知数だ。

 その後は証券取引上の大きな制度の変更がない。東証と大証の合併に伴い、現物株市場統合に続いて3月24日にデリバティブ市場が統合され、日経平均やTOPIXの先物・オプションなど金融派生商品の取引は大阪証券取引所改め「大阪取引所」に統合される。とは言っても所管が変わるだけで取引の際の手続き上の変更点はほとんどない。4月1日に金融商品取引法が改正されるがインサイダー取引などの罰則が強化される程度で、やましい行為に身に覚えがなければ無関係。4月1日に消費税率が5%から8%に引き上げられるが、証券取引関係で消費税の課税対象になるのは売買手数料や口座管理料、金融機関との口座間の振込手数料程度で、小売業のように増税前の駆け込み需要とその反動減が発生するようなことはないだろう。NISAについては税制改正で複数の金融機関での口座開設が可能になるという話があるが、現段階ではまだ具体化していない。

 株式市場自体も、国政選挙もなければ五輪開催都市決定のような「のるか、そるか」のイベントもなく、アベノミクスも引き続き推進中。噂される日銀の追加緩和はあくまでも「追加」であり、2013年4月の「異次元緩和」のような強烈なインパクトはないはず。アメリカの量的緩和政策も縮小開始がすでに決定済みでイエレン新議長がそのスピードを調整するだけ。最大のイベントは国内では4月1日の消費増税、海外ではアメリカの中間選挙という、激動の2013年とはうって変わって静かな1年になりそうだ。株価や為替も日経平均が56.7%も上昇し、為替もドル円が86円台から105円台まで円安が進んだ2013年はかなり特別な年で、2014年は大幅な上昇も下落もせず、変動幅はもっと小さくなることだろう。

 証券業界の業界環境は、「2013年の成果を引き継いで、静かに進む2014年」というイメージで、大きな業界再編も起こりそうにない。NISAによる個人投資家の掘り起こしも、投資信託の新規設定も、新規IPOも騒がれることなく楚々として進み、「コツコツ耕して育て、力を蓄える年」と言えそうだ。

 その意味では、激動の2013年が「個別株再起動元年」だったとするなら、静かな2014年はそれとは対比的に「投資信託元年」になるかもしれない。NISA、そしてROE(自己資本利益率)に着目した新指数「JPX日経400」は個人投資家が投資信託の良さを見直す良いきっかけになり、1年間で安定的な結果を残した投信は評価が高まって、年末の次のNISA買いの時期には新規買いと追加買いがあいまってブレークする。信託報酬を安定的に稼ぎ、支店に販売手数料をもたらしてくれる傘下の運用会社は証券会社のグループ内の花形部門になり、自己売買部門あたりから優秀な人材が「ファンドマネージャーをやりたい」と自ら手を挙げて集まり、優れたファンドがどんどん誕生する。そうやって日本も「ミューチュアルファンド王国」のアメリカに近づけば、証券会社の収益構造もイメージも大きく変わり、多少の株安や売買の低迷程度ではビクともしない体質に変わるだろう。(編集担当:寺尾淳)