前週17日のNYダウは41ドル高。12月の鉱工業生産指数は前月より改善したが消費者態度指数速報値が前月より悪化して相殺。モルガン・スタンレーは決算が市場予測ほど悪くなく大幅上昇。GEの決算はインパクトに欠けたが、クリスマス商戦でカード利用が増えて純利益ほぼ倍増のアメックスの好決算が大きく寄与した。VISAも連れ高。社員の5%削減も発表したインテルの決算がアップルやグーグルの株価の足も引っ張りNASDAQ総合指数は下落した。20日朝方の為替レートはドル円は104円台前半、ユーロ円は141円近辺で、アメリカのルー財務長官の円安けん制発言も出て前週末よりも円高が進んだ。
日経平均は10.32円安の15724.14円で始まるがTOPIXはプラスでスタート。日経平均は5分ほどで15700円を割り込み、午前9時33分には15614円まで下げ、TOPIXもマイナスに。ドル円が東京時間に104円30銭台から104円割れ寸前まで円高が進んだ影響だが、それが落ち着くと日経平均は15630~15660円のレンジで小動き。しかしこの日も「10時ホイッスル」でドル円は103円台に突入し日経平均は10分ほどで15600円をあっさり割り込む。毎日10時の大変化は「中国の政府系ファンド(SWF)の午前9時行動開始説」もあるが真相はいかに。国家外貨管理局(SAFE)、中国投資有限責任公司(CIC)がその元締め。前場はその中国の経済指標発表が相次ぎ、10~12月期国内総生産(GDP)は7.7%増で市場予測を0.1ポイント上回り、2013年通年も7.7%増で政府目標の7.5%を上回った。12月の鉱工業生産は市場予測を0.1ポイント、都市部固定資産投資は0.2ポイント下回り小売売上高は市場予測と同じだった。それでも最重要のGDPで安心感がひろがり11時台に日経平均は下げ幅圧縮。ドル円も104円台に戻して15650円近辺のもみあいになる。前引けは15636円。
後場はドル円が再び103円台になり15600円を割り込んだが一時的で、その後はドル円が140円台に戻っておおむね15650円を中心にプラスマイナス20円程度の値動きが大引けまでずっと続く。11月の鉱工業生産指数確報値は速報値より0.2ポイント低下し前月比0.1%減だったが影響は限定的。終値は92.78円安の15641.68円で3日続落した。日中値幅は153円。TOPIXは-3.53の1293.86と反落。アメリカが三連休中なので売買高は22億株と少なく、売買代金は1兆8972億円で18営業日ぶりに2兆円を割り込んだ。
値上がり銘柄は994で東証1部全体の55%を占め、値下がり銘柄は677。33業種別騰落率は12対21でマイナス優勢で、値上がり業種上位は海運、電気・ガス、鉄鋼、水産・農林、鉱業、機械など。値下がり業種下位はその他製造、精密機器、ゴム、不動産、保険、証券などだった。
日経平均採用225種はプラス73銘柄、マイナス143銘柄。プラス寄与度1位はゴールドマンサックスがレーティングを「強い買い」に引き上げたダイキン<6367>で+4円、2位は前場のマイナスからプラスに転じたファナック<6954>で+3円だった。マイナス寄与度1位はユニクロ海外店舗の「世界共通政策」を転換すると報じられ3日続落したファーストリテイリング<9983>で-24円、2位はアマゾンと提携して中小企業向けの低価格クラウド事業に進出と報じられたが85円安に終わったKDDI<9433>だった。
メガバンクはみずほ<8411>は2円高だったが、三菱UFJ<8306>は3円安、三井住友FG<8316>は15円安。野村HD<8604>は5円安だった。トヨタ<7203>は過去最高の1030万台という今年の世界生産計画を発表し、ゴールドマンサックスが投資判断を引き上げて6円高。アメリカでEV(電気自動車)の充電拠点を増設するという話題があった日産<7201>は4円高。しかしレガシィを5年ぶりに全面改良し今年後半に北米市場に投入と報じられた富士重工<7270>は10円安、4~12月期の営業利益が前年同期比6倍の1200億円という業績観測記事が出たマツダ<7261>は4円安。スズキ<7269>はゴールドマンサックスがレーティングを引き下げたが、軽SUVの増産が伝えられ14円高と逆境に強いところをみせた。自動車部品のニッパツ<5991>は玉村和己社長が「来期の最高益の連続更新は難しい」と答えると59円安で値下がり率11位。デンソー<6902>は藻類を利用して電子機器から金を回収する「都市鉱山」技術を開発と報じられ朝方は買われたが、終値は11円安。
中国は今、スモッグが多発するシーズン。空気清浄機を製造する「PM2.5関連」のダイキンは117円高だったが、シャープ<6753>は4円安、パナソニック<6752>は26円安。パナソニックとともにテレビの海外販売の台数を絞り込むとソニー<6758>は13円安だった。受注好調な横河電機<6841>はゴールドマンサックスの投資判断引き上げもあり19円高で昨年来高値を更新。インフラ輸出関連の人気はなお続き、この日は三菱電機<6503>が26円高と買われていた。
定年退職した65歳以上の元社員を若手の教育係として再雇用するJFEHD<5411>は45円高。中国のGDP発表を好感してコマツ<6301>は35円高。味の素<2802>はみずほ証券がレーティングを引き上げ74円高と昨年来高値を更新した。オリエンタルランド<4661>は東京ディズニーリゾート内の飲食店のトマトを自社生産すると報じられ90円高になった。
値上がり率1位の鳥居薬品<4551>は17日に新薬の製造承認がおりたと発表しストップ高比例配分の700円高で昨年来高値更新。スギ花粉症治療薬とJT<2914>と共同で開発した腎臓病薬の2種類で、JTは14円高だった。日経平均やTOPIXはマイナスの日も東証2部や新興市場は高く、この日は日経ジャスダック平均がザラ場ベースの昨年来高値を更新。新興市場のゲーム関連ではスマホアプリが累計7000万ダウンロードを突破したコロプラ<3668>が485円高で昨年来高値を更新していた。
19日に沖縄県の名護市長選が投開票され、米軍普天間基地の名護市辺野古移設に反対する現職市長が再選された。12月27日、仲井真沖縄県知事が辺野古移設を正式承認し、その見返りに安倍首相が沖縄振興予算を毎年3000億円台確保すると表明した時に買われた琉球銀行<8399>は18円安、沖縄銀行<8397>と沖縄のスーパーのサンエー<2659>は35円安。名護市長選、脱原発を訴える現職市長が当選した南相馬市長選に続き開票結果次第では安倍内閣にとって痛手になる東京都知事選は連合東京が舛添氏支援を決めて原発推進サイドが味方を増やしたが、東京電力<9501>は広瀬直己社長が朝日新聞のインタビューで首都圏に本社を置く企業を対象に域外電力販売を本格的に行うと語っても2円安。マーケットでは「脱原発銘柄の代表」にされた観のあるエナリス<6079>は234円高。IHI<7013>は老朽化した石炭火力発電所を最新鋭設備に改修すると発表し3円高で昨年来高値更新。三井物産<8031>はモザンビーク国営石油公社と油井管の調達・加工、石油代替燃料の生産などガス関連分野の協業で合意というニュースがあり15円高。2014年も「エネルギー」から目が離せない。
この日の主役は任天堂<7974>。朝は東証がカラ売り規制まで発動し一時2710円安まで下げ、終値は900円安で値下がり率4位。売買代金は2位のソフトバンク<9984>の約3.5倍の1389億円でダントツの1位と売り浴びせられ、時価総額が大きいのでこのところ堅調なTOPIXの足を引っ張った。17日の大引け後に今期の業績見通しを発表し、売上高は9000億円を5900億円に下方修正してピーク時の約3分の1。営業損益は1000億円の黒字を350億円の赤字に修正し3期連続営業赤字。手元資金が約8000億円と潤沢なので財務はピンチではないが増配は取りやめた。世界的にスマホゲームや「PS4」「Xbox」に押されて「Wii U」の販売が大不振に陥り、その世界販売目標を900万台から280万台に引き下げ、ソフトの目標も半減という状況。だが「今期営業黒字1000億円」が公約だった岩田聡社長は続投の構えで、1月30日にアナリストを集めて経営方針説明会を開く。証券コードの語呂合わせで「泣くなよ、任天堂」と励まされるか? それとも「なくなっても、よい」と引導を渡されてしまうのか?(編集担当:寺尾淳)