【日経平均】後場から先物売りの木枯らしが吹き61円安

2014年01月16日 20:58

 15日のNYダウは108ドル高と続伸。この日も経済指標と企業決算が株価を下支え。NY連銀製造業景況指数は市場予測より3.3倍も大きいポジティブサプライズ。12月の卸売物価指数(PPI)も市場予測を上回り、バンク・オブ・アメリカは10~12月期決算の純利益が前年同期比4倍強の増加で株価は2.3%上昇、世界銀行が今年の世界経済の成長率を上方修正し、ベージュブック(地区連銀経済報告)にも景気拡大の報告がゾロゾロ揃えば、どこかの地区連銀総裁が何を言おうと株価指数は上昇する。ドルは買い戻され、16日朝方の為替レートはドル円は104円台後半、ユーロ円は142円台前半だった。

 日経平均は36.42円高の15845.15円と小幅高スタート。TOPIXはすぐ1300の大台を回復した。日経平均は15900円を突破し、午前9時42分に15941円の高値をつける。TOPIXは8日のザラ場ベースの昨年来高値を更新した。しかしその後は9時台のうちに15800円台に戻り、10時台には15840円近辺まで上げ幅を圧縮し、前引けは15879円だった。

 後場は早々に15900円に一瞬タッチした後はズルズル下げ続け午後1時25分にマイナスに転落。TOPIXはプラスを維持した。元凶は先物大口売りで「四天王」のファナック<6954>とKDDI<9433>がプラスからマイナスに落ちていた。日経平均はプラスまで戻しそうになれば先物売りでドスンと下げるの繰り返しで、2時29分には15710円まで下落するなどくすぶり続ける。TOPIXもマイナスにタッチ。そのまま61.53円安の15747.20円で引けて、新年に続伸は一度もなし。日中値幅は231円と大きかった。TOPIXは-0.13の1294.39で底堅く、NT倍率は12.16まで圧縮。売買高は31億株で30億株台を回復し、売買代金は2兆5128億円だった。

 東証1部の値上がり銘柄数は804、値下がり銘柄数は849でほぼ拮抗。業種別騰落率もプラス16対マイナス17で、プラス業種の上位は空運、金属製品、石油・石炭、電気・ガス、鉱業、鉄鋼など。マイナス業種の下位はその他金融、パルプ・紙、倉庫、その他製品、不動産、サービスなどだった。

 日経平均採用225種は値上がり96銘柄、値下がり117銘柄で数の上では大きな差はない。プラス寄与度1位はデンソー<6902>で+3円、2位はソフトバンク<9984>で+3円。マイナス寄与度1位は終始マイナスで日経平均の足を引っ張り続けたファーストリテイリング<9983>で-36円、2位は前場はプラスだったファナックで-7円だった。

 みずほ<8411>は4円安、三井住友FG<8316>は43円安。アメリカの酒類大手ビーム社を買収するサントリーHDに1.4兆円を融資と伝えられた三菱UFJ<8306>も2円安。野村HD<8604>は1円安だった。

 「カーギャル」ことリケジョ(理系女子)の星メアリー・バーラ氏が、トヨタ<7203>からの世界首位奪還を誓ってGMの新CEOに就任。受けて立つトヨタは26円高。ホンダ<7267>は33円高。三菱自動車<7211>は89円高で値上がり率10位、売買代金12位と買いを集めた。日産<7201>は17円高。マツダ<7261>は6円安だった。シャープ<6753>は約2億株の売買があり売買高1位、売買代金2位に入り、21円高で値上がり率17位。17日に契約者7億人の中国移動(チャイナモバイル)でアップルのiPhoneが発売されるためアップル関連銘柄として買われた模様。東芝<6502>は売買高4位、売買代金5位で10円高だったが、日立<6501>は11円安。パナソニック<6752>はスマホ開発再参入の話題があったが10円安、ソニー<6758>は4円安、NEC<6701>は1円安にとどまった。

 社名に「通信機」がつく銘柄が値上がり率ランキング上位に入った。1位は海外子会社設立の検討開始を発表し業績向上期待で31円高になり昨年来高値を更新した池上通信機<6771>で、1億株が売買され売買高3位に入った。8位が岩崎通信機<6704>で9円高。5位に72円高のガリバー<7599>が入り、13位は9日に東証1部に指定替えになったサムコ<6387>で一時ストップ高の96円高で昨年来高値を更新した。

 赤ちゃんのおしりにも株主にもやさしいユニ・チャーム<8113>は、東南アジアで紙おむつ販売が好調で4~12月期で営業利益が480億円で過去最高更新という業績観測報道が出たが、通期業績は据え置きという部分を突っ込まれ54円安。第3四半期決算までくると通期見通しの修正や進捗率が市場でシビアに品定めされる。後発(ジェネリック)医薬品関連銘柄は悪く、東和薬品<4553>は200円安で値下がり率12位、沢井製薬<4555>は210円安、日医工<4541>は18円安だった。新薬価改定ルールをメリルリンチが悪材料視し、「買い」だったレーティングを東和薬品は2段階、沢井製薬は1段階引き下げた。それを尻目に創薬ベンチャーのマザーズのペプチドリーム<4587>は好業績観測で460円高になっていた。

 売買高6位で3円高の新日鐵住金<5401>は4月に進藤孝生副社長が社長に昇格し、友野宏社長が会長に就任する人事が報じられた。2012年10月の合併以来、新日鐵出身、住友金属出身のトップがCEOとCOO(最高執行責任者)を分けあうツートップ体制が、社長が両方兼ねるワントップ体制に移行するという。スマホの「スリートップ」をやめて事実上iPhoneワントップで契約者数急回復のNTTドコモ<9437>は、ネット通販などの成長分野に社員の約1割の2000人を投入すると報じられ16円高。ゲーム関連は、任天堂<7974>はJPモルガンがレーティングを下げて300円安。DeNA<2432>はヒット作が出ていないとシティがレーティングを下げて130円安で値下がり率6位。人気商売は当たれば大きいが、当たらないと苦しい。

 東京電力<9501>は「新・総合特別事業計画」を政府が認定し売買高7位で3円高。だが柏崎刈羽原発の7月の再稼働が前提で、第4位株主の東京都の知事選の結果次第では見直しを余儀なくされる可能性がある。再生可能エネルギーの供給が2025年までに原子力を上回る見通しをBPが出す中、エナリス<6079>は異常人気で1665億円という、東証1部トップのソフトバンクの2倍を超えるマザーズではケタ違いの売買代金を記録したが、株価は414円高まで上昇し上場来高値を更新しながら後場急落し64円安という派手な展開。都知事選にからめて言えば「舛添関連銘柄」の東電が辛勝し、脱原発がらみの「細川関連銘柄」が終盤急落した1日だった。

 この日の主役は「機械」セクター。エンジニアリングや重電と同じく年明けの主役インフラ輸出関連で、取引時間前に発表された11月の機械受注統計は前年同月比9.3%増で市場予測より7倍以上も大きいポジティブサプライズ。重工メーカーの三菱重工<7011>は10円高で売買高13位、売買代金14位。IHI<7013>は12円高で昨年来高値を更新した。昼休みに不二越<6474>が11月期本決算を発表し、今期業績予想が営業利益37.8%増で過去最高益を更新する見通しを好感されて後場急伸し19円高で昨年来高値を更新した。それ以外にも豊田自動織機<6201>、東芝機械<6104>、椿本チエイン<6371>、荏原<6361>など昨年来高値更新銘柄が続出していた。しかし、機械受注統計でも卸・小売業向けが特に好調だったというから消費増税前の駆け込み需要対応が寄与しており、4月以降に予想される個人消費の反動減は機械セクターの業績にも影響しそうだ。(編集担当:寺尾淳)