百田氏の過激な応援演説は田母神氏の強力な援軍となりえたか

2014年02月08日 10:18

 放送法は「僕のプライベートな行動まで縛る法律ではない」、と作家でありNHK経営委員の百田向樹氏が都知事候補田母神敏雄氏の応援演説を3ヶ所で行った。歴史観・国家観が近いという田母神氏の応援演説では次から次に自らの見解を披露した。

 曰く「蒋介石が『日本が南京大虐殺をした』とやたら宣伝したが、世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからです」、「今の憲法は戦争は起こってほしくないなあと願っているだけの憲法」、「絶対に戦争を起こさせない。そういう憲法に変えるべきだと僕は思っています」、「戦争では恐らく一部軍人で残虐行為がありました。でもそれは日本人だけじゃない。こういうことを義務教育の子どもたちに教える理由はどこにもない。子どもたちにはまず日本は素晴らしい国家であること、これを教えたい」

 憲法の改正を東京都が行うわけでもなく、こうした歴史観が田母神氏の構想する都政とどう関わってくるのかは不明だが、経営委員事務局は「政治献金も含めて政治活動の制限はない。個々の委員がどんな信条を持っていたとしても、経営委員会全体が偏らない判断をするならば問題ない」としている。また4日の午前には菅義偉官房長官が「放送法に違反するものではない。個人的な発言で、政府としてのコメントは控える」と会見で述べている。

 一方で疑問を呈する声もある。法政大名誉教授(メディア論)の須藤春夫氏は「NHKの最高意思決定機関メンバーの行為としては極めて異例。委員はNHKの名誉や信用を損なうような行為をしてはならない」とコメントしている。

 もしも筆者が誰でも知っているような有名企業に勤めていたとして、上記のような歴史観をマイクで演説したらどうなるだろうか。勤務先を明らかにせず行うならまだしも、堂々と勤務先を明らかにしていたことが、会社に知られれば、解雇はないだろうが、それとなくにしろ、厳重にしろ、慎むようにいわれることは容易に想像できる。

 民主党の桜井充政政調会長は「常識では考えられないこと」と4日の会見で批判している。NHK広報部では今回の百田氏の言動について「経営委員の発言についてはNHK執行部としては答える立場にない」としているが、もしNHKの社員の行為だったら関係無いではすまされないと思うのだが。(編集担当:久保田雄城)