2013年12月10日、米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のホールデンがオーストラリアでの自動車生産から撤退することを決めた。このホールデン工場の閉鎖決定が、オーストラリア自動車産業に与える影響は大きいとされていた。
当時、Toyota Motor Corporation Australia(トヨタオーストラリア/TMCA)は「ホールデンの決定を知り、悲しんでいる」とし、続けて、「ホールデンの豪・現地生産撤退は、トヨタの現地生産能力や現地サプライヤーネットワークにとって、かつてない圧力を与えるだろう」とコメントした。さらに、TMCAは、「サプライヤーや政府との間で、オーストラリアでの現地生産を続けることが可能かどうかを含めて協議する」としていた。最後までオーストラリアで自動車生産を行なうトヨタ自動車の動向に注目が集まっていたわけだ。
そのトヨタが2014年2月10日、2017年末までにオーストラリアでの車両・エンジンの生産を中止することを発表した。残念ながら…である。
現地生産中止後、TMCAはトヨタ車の輸入・販売会社として活動を継続する。TMCAは1959年に設立され、カムリ・ハイブリッドなどの生産を行なっていた。撤退の理由としてトヨタでは「厳しい市場環境や豪ドル高、今後、オーストラリア自動車産業全体において市場規模の縮小が見込まれる」ことを挙げた。
TMCAの安田政秀社長は、「われわれは事業変革のためにできる限りのことを行なったが、現実にはわれわれがコントロールできない要素があまりに多く、オーストラリアでの自動車生産を断念する」と声明した。
同時にトヨタ自動車の豊田章男社長も「これまでオーストラリアで(トヨタ車の)生産を続けるべく全力を尽くしてきた。しかし、市場環境などを勘案し、厳しい決断をした」と語っている。
オーストラリアでは自動車メーカーの生産撤退が相次ぎ、前述のGMほか、米フォードも2016年10月までにオーストラリア2工場を閉鎖すると発表。2008年には三菱自動車が撤退している。GMとフォードの発表を受け、部品調達先などの問題からトヨタも追随するという懸念が広がっていた。その懸念が現実となったわけだ。このトヨタの撤退発表によりオーストラリアで現地生産する自動車メーカーは皆無となる。
オーストラリア政府のデータによると、同国の自動車産業は部品や機械設備を含め関連企業が約150社あり、4万5000人以上がその製造に従事しているという。同国内の自動車生産は2004年の40万台余から2012年には20万台強と半減した。最近の豪ドル高で輸入車との競合が激しく、現地生産車が打撃を受けていた。(編集担当:吉田恒)