半導体メモリーの技術情報が韓国の半導体大手SKハイニックスに漏洩した事件を受け、東芝<6502>は同社に損害賠償を求めると発表。しかしその一方、先端半導体を共同開発する提携関係の解消は発表されていない。こうした事件が発生してもSKハイニックスと提携関係にあるのは、半導体に関わる投資額が急激に増加している状況と、韓国サムスン電子との競争が背景としてあるのではないかとの見方がなされている。
漏えいした情報はスマートフォン(多機能携帯電話)などで使用されるNAND型フラッシュメモリー技術で、絶縁膜などの情報がSKハイニックスに流出し、開発に使用された疑いが持たれている。東芝にとって半導体事業は大きな収益源の一つであり、2013年度に見込んでいる連結営業利益2900億円のうち、2100億円を半導体など電子デバイス部門が占めている。
しかしその一方、東芝とSKハイニックスはMRAM(磁気記録式メモリー)と呼ばれる次世代メモリーの開発を共同で行っており、16年度にもSKハイニックスの工場で量産が計画されている。
このMRAMの開発を行っているのは東芝・SKハイニックスだけではない。アメリカの半導体大手マイクロン・テクノロジーを筆頭に日本やアメリカの約20社や、また韓国サムスン電子なども実用化を目指し開発を行っている。MRAMの量産には1000億円以上の費用が必要となるとされており、これらの投資を東芝が単独で負担するのは困難で、今回の事件を契機にSKハイニックスとの提携関係を解消してしまうと開発競争から取り残される恐れがある。
またスマートフォンやデータセンター向けの高性能の半導体メモリーの需要はこれからも拡大が予想され、東芝が韓国サムスン電子との競争を続けるためには、新しい工場の建設などの面で協力し合うことの出来るSKハイニックスとの提携関係が必要不可欠である。
こうした状況下にあることから東芝としては、協力関係を維持することが難しい立場にありながらもSKハイニックスとの関係を継続させている。(編集担当:滝川幸平)