DRAM市場3強の時代に立ち向かう日本企業

2014年03月01日 19:24

DRAM(リサイズ)

大容量化が進むDRAM市場において、日本国内唯一のDRAM供給メーカー・ラピスセミコンダクタは中・小容量のニーズに応えて着実に需要を伸ばしている

 日本における唯一のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)専業メーカーであったエルピーダメモリ株式会社が、2月28日に社名をマイクロンメモリジャパン株式会社(英語表記:Micron Memory Japan, Inc.)に変更する。2012年2月27日に会社更生法適用を申請してから丸二年。昨年5月に第1回目の減増資として株式全ての無償取得・消却が行われたのち、7月には米国のMicron Technology社を引受人とした募集株式の発行が行われ、エルピーダメモリは同社の完全子会社となった。これにより、DRAM市場は、韓国のSamsung ElectronicsとSK Hynix、そしてMicron Technologyの3強の時代に突入し、日本は大きく水をあけられた形になってしまった。

 DRAMは、コンピュータなどに使用される半導体メモリの1種で、他に比べて大容量のメモリを容易に実現できるのが特長だ。そのため、DRAMは低コストであることが大きな魅力で、今日では、1987年に東芝<6502>が開発したNAND型フラッシュメモリ技術と共に、多くの電子機器のコンピュータを支える2大メモリ技術として知られている。DRAMは価格競争が激しく、さらなる大容量化と低コスト化のために最先端製造設備の導入を必要とし、巨額の投資体力がある企業が勝利し勝ち残ってきた。エルピーダもこの激しい競争に敗れ、行き詰ってしまったのだ。

 一部ではDRAMは技術的にそろそろ容量の限界に近づいているともいわれており、後継技術として次世代不揮発性メモリを待望する声も多い。実際、従来型のフラッシュメモリに比べて書き込み速度が20倍、しかも消費電力が20分の1という高速・高性能なメモリ「ReRAM」(Resistive Random Access Memory:抵抗変化メモリ)をアメリカのベンチャー企業Crossbarが開発し、話題を集めている。しかしながら当面の間は、まだまだ主流技術はDRAMであることは間違いないだろう。

 では、日本企業はこのまま泣き寝入りするか、次世代メモリの台頭時期を待って巻き返しを図るしかないのだろうか。実は、そうとばかりも言い切れない。確かに大容量で高速なDRAM市場は3強の独占状態だが、一方で、供給メーカーが減少する中・小容量DRAMに目を向け、日本国内唯一のDRAM供給メーカーとして成績を上げている企業がある。それがローム<6963>の子会社ラピスセミコンダクタだ。同社は、DRAMなどのメモリLSIの他、ロジックLSI、表示用ドライバLSIの開発・製造・販売などを行っている。

 市場では、ノイズ設計の観点などから中・小容量・中速DRAMに適したアプリケーションが数多く存在している。また、設計変更が困難あるいは設計変更の費用を抑えたいなどの理由から、中・小容量DRAMを継続して使用したいというニーズも多い。同社ではこれまでに車載市場や産機市場に対応した高信頼性の新商品を開発するなどして、約170機種に及ぶラインナップの拡充と、長期安定供給の安心と信頼を提供してきた。そして2014年2月25日、幅広いアプリケーションの要求に対応するため、128M/256MビットのSDRAMを新たにラインアップに加えると発表した。

 製品の特長としては、同社独自の4段階出力ドライバビリティ調整機能を搭載しており、ノイズ対策部品やダンピング抵抗部品の削減を可能にしている。また、リードフレームに銅フレームを採用することで、車載機器や産業機器などの高い信頼性が要求される用途にも最適なLSIとなっている。2014年3月より月産100万個の体制で量産出荷を開始する予定だ。

 たとえ価格競争で他国の企業に遅れをとったとしても、信頼できる製品を確実に市場に提供し続けることこそが、日本製品の特長であり、誇りではないだろうか。また、韓国や中国が台頭してきた今、その勢いと真っ向から向き合うのではなく、製品の特長を活かし、確固たる需要を獲得していくことこそが、これからの日本企業の世界に向けたビジネスのあり方の一つと言えるのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)