自由、気ままに暮らしたい賃貸派の若者に朗報? 賃貸契約に新方式

2014年03月30日 18:12

 「リノベーション物件」という言葉を最近、最近目にすることが多くなった。

 リノベーションとは大まかに言うと、リフォームよりも大規模な改修工事を行い、建物の機能や価値を向上させることを言う。つまりリノベーションすることにより、デザイン性を高くしたり、住む人の暮らしに合わせて改良することが出来るというわけである。筆者もいつかは中古不動産物件を買い、自分の好きなようにリノベーションして暮らしたいと考えていた。なぜなら賃貸では入居した時と同じ状態に戻さないといけないという「原状回復」の義務があるからだ。

 だがここにきて、国土交通省がその「原状回復」が不要になる新方式を導入する予定だ。入居者が家主と合意したうえで、自己負担で自由にリフォームすることが認められる。例えば、入居者好みの壁紙にしたり、最新の水回り設備にすることが可能になり、そのままの状態で退去出来るようになる。持ち家を貸す側も修繕や清掃の負担がなくなり、もっと安い家賃で入居者を募集することが可能になる。

 1999年に国交省が原状回復をめぐるガイドラインを発表したが、その後も実際のトラブルは多い。筆者もかつて、退去時にきれいに掃除をしても「ルームクリーニング代として数万円の清掃費は必ずかかる」と敷金から差し引かれ、なんとなく腑に落ちなかったことがあったが、それもなくなるだろう。

 この新方式は筆者のような人間には非常に嬉しいものだが、国交省がこれだけ力を入れるのは、背景に増え続ける空き家問題がある。全国の空き家は2008年には約756万戸で、全住宅に占める比率は13%に達した。これは7件に1件は空き家という数だ。 また日本の人口は05年から減少に転じており、ますますそのペースは拡大しつつある。空き家がますます増えれば、治安悪化や地震による倒壊等防災面での危険にもつながるとして、国は住宅政策を新築の促進から既存物件の有効活用に移行しはじめている。国交省も今年度から中古住宅の価値を高める工事向けの補助金制度をつくるなどして中古市場活性化をはかっている。

 新方式の導入によってこのような様々な現実問題の解決も期待されるが、それ以上に注目するのは、これまで賃貸の画一的な間取りにおさめられて暮らしてきた人たちが、思い思いの暮らしが出来るようになるという点だ。

 現代の若者達の思考は、これまでの画一的な大量生産、大量消費から、より自分らしい暮らし方を求めるようになってきているように筆者は思う。実際、DIY可能賃貸物件や、個性的なカスタマイズが施された賃貸住宅、入居者の希望に合わせてオーダーメイド出来るという賃貸住宅も増えてきている。人口減少によって空室率も増加するとされている賃貸住宅市場において、これらの部屋には空室待ちがずらっと並び、その数が100組を超えるマンションもある。そして自分の暮らしに関心を持ち、そこに暮らす人たちは本当に充実していて楽しそうだ。

 国交省には、人口減少と空き家の増加という国の原状のハード面と共に、そこに住まう人たちの暮らしというソフト面も含めた賃貸契約の新方式を、是非とも期待したい。(編集担当:久保田雄城)