東芝がドイツで太陽光発電の電力小売り事業に参入する理由

2013年12月08日 13:40

 東芝<6502>は、ドイツ最大手の不動産会社であるガグファ社と提携し、同社が所有する賃貸アパートで太陽光発電システムを活用した電力小売事業を2014年3月からフィーリンゲン・シュウェニンゲン市とオストフィルダン市で開始する。

 年金基金などから投資を募りガグファ社が保有するアパートに当社の太陽光発電システムを設置する。太陽光発電システムで発電した電力は、東芝インターナショナル・ヨーロッパ社(TIL)が購入し、配電事業者の売電価格より安価でアパートの居住者に売電する。また、夜間など太陽光発電システムが稼動しない時間帯は、TILが卸電力市場から電力を直接調達し、太陽光発電システムの売電価格と同等の価格で居住者に売電する。

 ドイツでは、00年に太陽光発電の固定価格買取制度が導入され、買い取り価格が年々低下している一方で、太陽光発電の増加に伴い電気料金は高騰している。また、電力取引の自由化が進んでおり、小売事業者は卸電力市場から直接電力を調達することが可能だ。今回のモデルは、小売事業者であるTILが、電力系統を介さずアパートの居住者に直接売電することで、地域の電力系統への負荷を低減するとともに、居住者に環境負荷の少ないエネルギーを提供できるとしている。

 同社は、今後スマートメーターや蓄電池、その制御技術などを組み合わせ太陽光発電システムで発電した電力を昼夜問わず活用できるモデルを構築するとともに、リアルタイムで地域のエネルギーマネージメントができるサービス事業への展開を検討し、各国の電力事情に適した分散電源を活用したスマートグリッド事業のグローバル展開を加速するとしている。

 東芝の今回の取り組みは、当然ドイツに限定したものではない。同社は今後、タイやインドネシアでも同様の事業展開や、将来的には日本国内への参入も視野に入れているのは間違いないだろう。そのための布石の意味も、今回の電力小売り事業に参入には含まれているだろう。(編集担当:久保田雄城)