2日、日本銀行は3月の全国企業短期経済観測調査(短観)の一環として、「企業の物価見通し」を初めて発表した。企業が想定する消費者物価(CPI)の前年比上昇率は、全規模・全産業の平均で1年後がプラス1.5%、3年後と5年後がプラス1.7%であった。日本銀行の掲げる物価上昇率2%という目標に対して、各企業は低めの見通しを持っていることが分かった。今回の調査では、約1万300社が回答を行った。
今回発表された結果の内訳を見てみると、1年後に前年比「プラス1%程度」の見通しを持っている企業が29%と最も多く、続いて「0%程度」が17%となっている。また、その期間が長くなると前年比「プラス2%程度」との構成比が近づくという傾向にあり、5年後では前年比プラス「2%程度」が15.9%と、前年比プラス「1%程度」の15.5%程度を上回っている。
業種別に見てみると、大企業は製造業、非製造業ともに1.1%にとどまり、中小企業は製造業、非製造業ともに1.7%であった。中小企業の方がコスト高や人手不足などにより、価格のプレッシャーを感じやすいとの心理から、こうした結果になったものとみられる。
そして今回の調査では具体的な物価上昇率以外にも、「イメージなし」という選択も用意されており、18%の企業が1年後の見通しに対してこの回答を選んだ。また5年後では40%の企業が「イメージなし」と回答しており、期間が長くなるにつれこの項目を選択する企業が増えている。
このように1万社規模での「企業の物価見通し」調査は、世界にも前例がない。日本銀行は去年4月、2年後の2015年春ごろをめどに物価上昇率を2%とする目標を掲げ、そのために金融緩和を続けている。しかし今回発表された「企業の物価見通し」の結果では、多くの企業が徐々に物価は上昇していくという見方は持っているものの、それは日本銀行が目標とする2%には届かなかった。日本銀行はこれからも四半期ごとの短観でデータを取り続け、日本経済や物価動向の分析に役立てたいとしている。(編集担当:滝川幸平)