サプリメントを熱心に選択・利用する目的は多様化している。そして、期待する効果も多彩だ。ヒアルロン酸、グルコサミンなど一般的なサプリから、聞いたこともないような、さまざまなサプリがインターネットで売られているほか、コンビニや100円ショップの棚にも並んでいる。
内閣府消費者委員会が2012年実施した調査では、一般消費者の約60%が、何らかのサプリメントを使い、50歳代以上でそれは急増し、約30%がほぼ毎日利用しているという。また、市場調査会社インテージの調査では、年齢が上がるほど複数サプリの併用が増えるという。先の内閣府の調査では、2012年で市場規模は1兆7000億円に達するとしている。先日、サプリメントを販売する中堅企業の社長が、ある政党幹部に数億円の資金供与したとしてニュースにもなっていた。
一方、1991年に制定された健康食品と呼ばれる特定保健用食品いわゆるトクホからも、サントリー食品「特茶」や花王「ヘルシアコーヒー」などがヒットしたが、申請・許可にコストがかかり停滞気味だ。
逆に、「糖質カット」や「カロリーゼロ」を全面に訴求するビール類など酒類を含む飲料品の販売は急速に成長しており、毎年減少傾向が続く酒類業界でも、この分野の製品だけは、どこのメーカーでも急伸長している。
確かに「トクホ」は国の制度によって個別製品ごとに審査・許可された商品だ。が、サプリメントに明確な規定は無い。サプリの容器やパッケージには、さまざまなメリットが記載されてはいるが、いわゆる「健康食品」として流通しているだけなのだ。サプリメントにも国が決めた一定の基準を満たせば「機能栄養食品」と表示することができる。ただし、ビタミンとミネラルに限定されている。
前段で「サプリにその“メリット”が記載され……」と記したが、サプリが「○○……に効く」などの効果・効能を訴求すると、薬事法違反となる。しかし、一方で消費者は、そのサプリがどういう症状に効くのかという十分な商品情報がほしい。こうした法整備と実態に大きなギャップがあるのに、マーケットが拡大しているのが、サプリメントなのだ。
こうした日本のサプリ市場を後押ししそうなのが、政府の成長戦略で決まった健康食品の表示規制緩和だ。米国のサプリメント制度を参考に2014年度にも解禁される方向で検討されている。
米国ではサプリメントを医薬品と食品の中間に位置づけている。米国におけるダイエタリーサプリメントは、1994年に決まった法律「DSHEA」で規制される。口に入るものを「医薬品」「サプリ」「食品」の3つに分類。法施行後、科学的根拠に基づいて健康への効果・効能を謳うサプリを大幅に増やした。結果として、米国でその市場が一気に拡大した経緯がある。
日本でも米国と同じことが起きれば、市場は一気に拡大。経済効果も大きいと、政府自民党などが推進する方向で動き・業界団体の期待も高まっている。
しかしながらサプリメントは米国でも医薬品ではない。あくまで栄養補助食品なのである。今後の政府自民党の対応を注視したい。(編集担当:吉田恒)