先日、大阪キタの新しいランドマーク「グランフロント大阪」が開業から1周年を迎えた。運営事業者の発表によると、1年間の来場者数は5300万人で、当初目標の約1.5倍。ちなみに東京スカイツリータウンの初年度の来場者数が5080万人であったことと比較するといかに好調であるかがよく分かる。また、飲食、物販など266店舗の売上高も初年度目標の400億円を大きく上回る436億円となっている。
グランフロント大阪の魅力の一つは、商業施設でありながら、店舗のみに留まらないことだ。その最たるものが、北館の「ナレッジ・キャピタル」。国内外の産官学の「知」の交流を目指す知的創造拠点として設置されたこのナレッジ・キャピタルには、7フロアにわたり、企業や研究者、クリエーターが集まる拠点として活用されている。
また、このナレッジ・キャピタルには、NTTドコモやロート製薬、コカ・コーラウエスト、近畿大学など、全21の企業や団体が最先端の技術や商品を紹介する「フューチャーライフショールーム」が他にはない取組みとして注目された。さて、1年を経てどうなったのだろう。住宅メーカー大手の積水ハウスが展開している「住ムフムラボ」の一周年報告会が報道陣に公開された。
ショールームといえば、商品を見たり買ったりする場所というイメージがあるが、この「住ムフムラボ」の特長は、そこに「参加する」という要素を加えたことにある。ラボという名前の通り、一般の生活者や他企業、大学などと共に創造する研究施設という意味合いが深い。
同施設では、積水ハウスが掲げる「SLOW & SMART」を具現化するための一つの手段として、「研究メンバー制度」を運用し、様々な企画やワークショップなどのプログラムを通して、販売する側だけでなく住む側からの意見を収集することで、生活者視点での「共創」研究を推し進めている。これが来場者にとって共感を呼ぶとともに、感性を磨いたり自分らしさを発見できる場として好評となり、来場者数は一年で約20万5千人、
リピーター率も3割を誇る。また「住ムフム研究メンバー」登録者はたった一年で約7800人に達した。大阪駅前のグランフロント大阪内という立地もさることながら、理想の住まいを共に創るという、参加型のコンセプトも受けているようだ。
「住ムフムラボ」では、最新のユニバーサルデザインを検証する研究ワークショップや、光が全く届かない室内で視覚障害者のアテンドにいざなわれて暗闇体験をする共創プログラム ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)「対話のある家」を開催してきたが、実際にDIDを活用した研究により、施錠・解錠の状態がキーを「見て」「さわって」わかる「しめ忘れお知らせキーII」が開発されて商品化されるなど、「住ムフムラボ」発信の商品の実用化も始まっている。
「住ムフムラボ」はもう一つ、我々に新しいライフスタイルを提案しているようにも思える。それはメーカーと顧客、そして他企業が「共創する」ということだ。住宅だけに限らず、消費者はこれまで、現状で存在するものを受け入れるしかなかった。しかし、実際に使う側の意見が取り入れられていない商品は使いにくいし、どこかで我慢をしなくてはならない。ユーザーと共創することで、販売する側も購入する側も新しい発見ができるだろうし、異業種間で共創することでイノベーションも生まれるだろう。これからの新しい商品開発スタイルの、一つの形になるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)