可能性は無限大 ビッグデータが未来を開く

2014年05月06日 11:24

 大人から子供まで、誰もが一度は口にしたことのあるお菓子、カルビー<2229>のポテトチップス。原材料はもちろんジャガイモだがその安定供給のためビッグデータが活用されていることはあまり知られていない。ジャガイモは意外にも繊細な植物で、気候の変化などによって疫病に罹りやすい。そのため同社では北海道にある約1100の契約農家の畑にセンサーを設置し、そこから気温や湿度、日射量、降水量といったデータをほぼリアルタイムで収集しているのだ。

 集められたデータは直ちに分析され、各農家にフィードバックされる。疫病の予防作業が必要になればすぐにその情報が農家へと伝わる仕組みだ。カルビーの好調な業績を支える大きな役目を果たしている。

 ビッグデータとは大容量のデジタルデータのことで、ハードウェアの性能向上やインターネットの普及などにより世界中の様々なサーバー上に大量に保存されている。米国のIT専門調査会社IDCによると、2020年には40ゼタ(1ゼタは1兆の10億倍)バイトにものぼると推計されているほどだ。この途方も無い情報量であるビッグデータを、これまではリアルタイムに処理することは大変困難であった。しかし、近年になって高速かつ簡易にこれを分析できる技術が開発され、気象情報や消費者の購買動向など今まで見えていなかった新しいパターンが次々と見つかっているのだ。これまで無関係と考えられていた情報に意外な繋がりがあることが分かれば、新たな市場、ビジネスが生み出される可能性も大きい。様々な企業がビッグデータに高い関心を寄せているのも頷けるというものだ。

 また、ビッグデータの活用には政府も積極的だ。総務省では2016年を目処に、台風やゲリラ豪雨によって災害の発生が予測される場合、インターネット上にあるツイッター等のビッグデータと気象データを組み合わせ、避難情報として地方自治体や住民に速報を伝えるシステムを構築する予定だ。

 災害発生時、ネット上には個人が実際の目で見た各地域の被災情報がリアルタイムでアップロードされる。この情報を利用、分析し迅速な避難誘導に繋げようというわけだ。

 スーパーコンピューター「京」が話題になったように、日本のハードウェア開発技術は世界トップクラスにある。ビッグデータはこの技術を生かすための最高の素材と言えるだろう。ビッグデータは一次産業から小売業、飲食業まで活用できない分野は無いといえるほど裾野が広い。ポテトチップス同様、身近な思わぬ場所で我々はその恩恵を受けているのだ。(編集担当:久保田雄城)