様々な分野に広がる宅配事業

2012年08月14日 11:00

 インターネット環境の普及や高齢化、人口減少、販売店などの拠点の減少といった社会環境の変化を背景に、様々な分野で新規参入や事業拡大が進み、宅配市場が徐々に拡大を見せている。

 中でも顕著な拡大を見せているのが、主に病者・高齢者をターゲットとした宅食市場である。ワタミタクショクを展開するワタミは、96ヶ所の新規営業所を開設し、営業拠点数は351ヶ所にまで拡大。5月の最終週における調理済み弁当の平日1日あたり配食数は24万1000食(前年同月最終週は13万2000食)と順調に拡大しており、平成25年3月期第1四半期決算において、宅食事業における売上高は89億1200万円と前年同期比175.2%もの伸長を見せている。

 また、食の安心・安全に対する需要を宅配事業拡大へと繋げる動きも見られる。農産物の安定供給、農業経営の効率化を目指した直営農場「らでぃっしゅファーム」事業を展開するらでぃっしゅぼーやは、東日本大震災以降、西日本産地の農産物に対する安定供給のニーズが高まっているとしてながさき南部組合が経営する「農業生産法人株式会社オーガニックランドながさき」へ出資し、同社の運営によるらでぃっしゅぼーやの農場「らでぃっしゅファームながさき」を開設。生産された農産物は、同社の運営する、有機野菜・低農薬野菜、無添加食品の会員制宅配サービスにて販売する予定だという。

 その他、セブンイレブンジャパンは、食事を届けるサービス「セブンミール」や移動販売の「セブン安心お届け便」等の取り組みを拡充。特に、今年5月から開始している、注文500円以上から宅配料金無料の「セブンミール」は好評を得ているという。その為、7月にはトヨタから発売される超小型電気自動車の新型「コムス」を活用し、セブンイレブン店内のほぼ全ての食品や日用等を届ける「セブンらくらくお届け便」の運用を開始すると発表するなど、宅配体制を強化している。また、ファミリーマートも、高齢者向け宅配弁当会社のシニアライフクリエイトを子会社化し、ビジネス領域の拡大を図っている。さらに、京浜急行電鉄および大和ハウス工業は、建設・販売中のトリプルタワーマンション「Riverie(リヴァリエ)」において、マンション入居者に対して、イトーヨーカドーネットスーパーで注文した商品を不在時でも宅配ロッカーで受け取れるシステムを導入すると発表するなど、宅配事業の拡大を見込んだ展開も広がりを見せている。

 少子高齢化が進むにつれて宅配は、他社との差別化を図ったサービスの一環という位置づけから、生活に欠かせないインフラの一部となりつつあるのかもしれない。