昨年は計画停電が実施されるなど電力不足を肌で感じたことから、国民の義務のような意識で多くの人が取り組んだ節電。今夏も、7月の熱中症による搬送者が集計を始めた2008年以降初めて2万人を超えることが確実視される程の猛暑となっているが、原発の再稼働により節電目標が大きく緩和されたことなどから、節電への取り組みに白けている感がある。こうした中、各地方自治体や企業、環境対策を推進する団体などでは、節電に関するイベントを開催し、節電意識の向上やその実施を推進している。
神奈川県茅ケ崎市では、市内在住の世帯を対象に、平成24年8月~9月の電気使用量が前年同時期に比べて2ヶ月連続で削減できた世帯にエコバッグ等の粗品をプレゼントする節電コンテストを実施。大分県でも、「こども省エネチャレンジ作戦」と称した節電コンテストを開催し、小中学生がいる家庭を対象に、8月分の電気使用料の少なさや昨年からの削減率を競っている。この他にも、全国各地で各地方自治体がこぞってコンテストを実施している。
また企業でも、阪急阪神ホールディングスが全従業員及び役員を対象とした節電コンテスト「阪急阪神節-1グランプリ」を実施。富士通テンでも2011年夏・冬に続き、富士通テングル―プ全従業員を対象とした節電コンテストを実施している。このように、企業による節電コンテストは従業員やその家族などを対象としたものが多い中、積水ハウスでは顧客を対象とした節電コンテストを実施。積水ハウスオーナーを対象に、大幅な削減を達成した家族やユニークな取り組みで成果を上げた家庭に対し、図書カードやリフォーム時に使える20万円分のポイントを進呈する「節電アクションコンテスト2012」を開催している。昨年も実施されたこのコンテストは、前年同月比25%減という、東京電力管内の一般家庭における平均削減率6%を大きく上回る成果を上げているという。
節電とは、言い換えれば「いかにして買電量を減らすか」ということである。「エネルギー白書2011」によると、業務部門においては、節電意識向上と省エネ技術の採用による積極的な節電が施されており、エネルギー消費は2006年頃を境に減少を始めている。一方で、資源エネルギー庁によると、2010年の家庭における電力消費量は1990年の約1.65倍と増加しており、省エネ家電等の普及が進んでいるにも関わらず家庭用エネルギーの消費は減っていない。社会全体での節電を実現するためには家庭部門の取り組みが不可欠であり、家庭部門での節電には、より一層の意識の高まりが必要である。そのための取り組みとして、上記のような地方自治体や企業による節電コンテストは意義のあることと言えるのではないだろか。