昨年「待機児童ゼロ」を達成した横浜市が、今年4月1日現在で待機児童が20人となり2年連続のゼロは実現できなかったことを発表した。待機児童ゼロ発表後に入所申込者が集中したことがその理由だ。保育所の申込者数は52,932人と昨年同時期と比較して4,114人増となり、この過去最大の入所申込者の増加に施設用地と保育士の確保が追いつかなかった。市は来年度に向けて再び待機児童ゼロを目指すが、既に条件の良い土地はほとんど残っておらず、厳しい状況は続く見込みだ。
この「ゼロ未達」に先行きを不安視する報道が相次いだが、過剰な反応は厳禁だ。待機児童解消への横浜市の取り組みは着実に実を結んできたが、報道の影響で市民の理解が得られなくなってしまえば、全国の待機児童解消への機運がしぼみかねない。
昨年ゼロ達成で全国から注目から横浜市だが、「ゼロ」という言葉だけでなく、市がこの10年間待機児童の数を着実に減らしてきたことこそ評価すべきだ。4年の待機児童数は1,140名。今年度の実に50倍だったのだ。全国ワースト1位という不名誉な状況を挽回するため林文子市長は株式会社の参入を促すなどの取り組みを続けてきた。横浜市は今、待機児童を解消したことによる入所希望者の増加という「いたちごっこ」に直面している。
このいたちごっこ、実は横浜市は既に一度経験している。中田宏前市長は2006年に待機児童を3分の1の353人まで減らしたが、保育所に入りやすくなったことで入所希望者が増加し、2010年には1,552人と再びワーストとなってしまったのだ。それでも中田・林両市長は着実に成果を積み重ねてきた。いたちごっこに、横浜市は一度打ち勝っているのだ。
横浜市は既に待機児童解消の素地を整えている。これからはより広域で対応をするなど自治体間の協力も含めた新たな対応策が求められるだろうが、私たちはその取り組みを後押しすべきだろう。
今回の横浜市の「ゼロ未達」報道と同時期、名古屋市は待機児童ゼロ達成を発表した。おそらくこれから名古屋市でも入所希望者が増加するだろう。そして待機児童も生まれるはずだ。しかし、私たちはいたちごっこを恐れてはならない。待機児童解消には当然予算が必要となる。その予算を確保するには市民の理解が不可欠だ。次の世代の子どもたちのためにも、掲げた旗を降ろしてはならない。(編集担当:久保田雄城)