保育士不足解消には何が必要か 保育士試験年2回案は見送り

2014年05月21日 10:26

 安倍首相が推し進めている政策の中に「子育て支援」と、それに関連した「待機児童対策」がある。この一環として、政府は全国の公務員宿舎跡地などの国有地37ヶ所を、2014年度から新たな保育所用地として活用することを発表した。これにより約4300人の待機児童が解消される見通しとなっている。

 しかし、そうした動きの一方で、現在年1回の保育士試験を年2回に増やすという政府の規制改革会議の要望を厚生労働省が見送る決定がなされた。理由は「年2回に増やした直後は受験者・合格者ともに増加するが、4~5年後には年1回と同数になるため」、また「年2回分の試験開催にかかる費用を賄うには、受験料を8000円程度引き上げる必要があるため」とされている。

 この決定に、保育現場や有識者、また試験受験者からは疑問の声が挙がっている。待機児童の問題は認可保育園の不足にあるが、冒頭でも述べたように保育施設そのもの、いわゆる「箱」は増やされ、事実都市部などでは保育施設の数自体は多くなっている。しかし、「施設自体は出来ても保育士不足のままでは受け入れ児童数を増やせない」というのが現状だ。

 そのため今回の厚労省の決定は、「たとえ一時的であっても年2回の受験によって、1人でも多く保育士を増やしてほしい」という現場の思いとは乖離したものだと言えるだろう。

 保育士不足の原因には、年1回のみの試験制度だけではなく、低賃金や1人当たりの負担の大きさを理由とした離職率の高さも挙げられる。保育士の年間の離職人数は約2万人、その一方で毎年新しく保育士に就職する人数は約1万人と言われ、差し引きで毎年1万人が不足していっている計算になる。このことからも保育士を増やすことがどれだけ急務であるかが分かるだろう。

 保育士不足解決のためには、新保育士を増やすことはもちろん、同時に保育士の離職率を下げることも重要だ。そのためにはより現場を知り、賃金面・負担面での待遇改善が行わなければならない。また、保育士資格を持っているが現在離職している潜在保育士は約57万人いるとも言われている。根本的な待遇改善が行われれば、彼らが再び保育現場に帰ってきてくれる可能性も高い。

 保育料は、法律上はサービス内容や保育士の仕事内容によって決める「応益負担」とされているが、実際には各自治体によって家計を考慮して決められていることが多い。これは子育てをする家庭側を助けるための制度ではあるが、一方で保育士の低賃金・高負担の要因ともなっている。こういった部分の改善策を早急に打ち出さなくては、結果的にしわ寄せは子育てをする家庭・保育現場両方にやってくるのではないだろうか。より踏み込んだ「子育て支援」「待機児童対策」が急がれる。(編集担当:久保田雄城)