立体的な造形物を作製できる「3Dプリンタ」。最近は3Dプリンタを使って拳銃を作製した事件が発生したこともあり、世間の関心を集めている。
そんな中、セイコーアイ・インフォテックは5月20日、3Dプリンタ「ProJet 4500」を発表。同日より販売を開始した。ProJet 4500は米3Dシステムズ社の製品で、国内ではセイコーアイ・インフォテックが代理店として販売や保守を手がける。
最大の特徴はフルカラーの造形物を作製できる点だ。一般的に3Dプリンタで作製した造形物のほとんどが、フルカラーで出力することはできない。単一色、もしくは数種類の色を使ったものしか作製できないのだ。インクに相当する樹脂を数種類しか同時利用できない3Dプリンタがほとんどだからである。そのため、フルカラーにするなら造形物を作製後に別途着色しなければならない。
しかしProJet 4500は、造形物を印刷すると同時に着色することを可能にしている。3Dシステムズ社が独自開発した「VisiJet C4 Spectrum」と呼ぶパウダー状のプラスチックを利用することで、約100万色の色を再現する。造形物は1時間あたり8ミリの速度で作製される。
着色済みのプロトタイプを作製することで、商品の使用感やイメージを把握しやすくなる。別途着色する手間がかからないため、プロトタイプ作製にかかる工数削減も見込める。色を重視する商品などを評価したいケースにおいて重宝する。
3Dプリンタを使ったフルカラーの造形物はこれまで、米Zコーポレーションの製品しか作製できなかった。粉末を使ってフルカラー印刷する作製工法に特許を持っていたためだ。しかし2012年1月、3DシステムズがZコーポレーションを買収。これによりフルカラー印刷の手法を3Dシステムが利用できるようになった。
3Dプリンタは主に試作品(プロトタイプ)を作製する用途を想定している。しかし利用する樹脂が多様化し、耐熱性に優れるもの、丈夫で壊れにくいものを作製できるようになりつつある。プロトタイプだけではなく実際に販売する商品を作製することも十分可能だ。
最近の製造業は「多品種少量生産」のプロセスが増えている。こうした少量生産のビジネスモデルを利益に寄与させるためには、3Dプリンタを新たな“生産ライン”として導入するのも一案なのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)