【家電量販店 2014年の展望】消費増税後の「全球凍結期」を乗り切るには家電以外への事業多角化しかないのか?

2014年01月07日 07:09

 家電製品は耐久消費財なので、その販売は2014年4月の消費増税前の駆け込み需要の盛り上がりとその反動減の影響をもろに受けそうだ。3月も下旬になると消費者が「ショールーミング」を気取ってネット通販で注文しようとしても「入荷待ち」の商品が続出し、下手をすると8%の消費税を払わされる「一生後悔する痛恨の買物」になりかねないので、家電量販店の店頭で即断即決で買ってくれるという、店にとっては〃ありがたい客〃が増えそうだ。しかしそれも3月31日24時限りである。翌日からは「客が消えた!」と店長以下唖然とし、店舗の一部の閉鎖も考えていいぐらいの激変に見舞われるだろう。家電量販店業界の2014年は、客が押し寄せる駆け込み需要の時期の商品の手当てや、4月1日以降の氷河期よりもひどい「全球凍結期」対策に頭を悩ませることから始まりそうだ。

 その全球凍結はいつになれば溶け始めるのか。夏のボーナス時期に客の懐が暖まって溶ける。猛暑が我慢の限界に達しエアコン需要が盛り上がる真夏に溶ける。あるいは住宅ローン金利の低下や景気対策の住宅取得促進政策で消費税ゼロの中古住宅の売買が上向き、引越の時に家電製品を買い替えるので溶ける。4Kテレビの価格低下で待機組が「やっと買える値段になった」と買い始めて溶ける。というようにシナリオはいろいろ考えられる。それでも反動減はどれぐらい規模が大きいものなのか、いつまで続くのか、予測できない部分は大きい。

 ただ、消費税には無関係の客もいる。それは訪日外国人観光客で、消費税抜きの免税で買物ができる。2013年は東南アジア方面からの訪日客が急増して初めて1000万人を超えたが、東京五輪決定も手伝って現状の円安が続く限り、2014年はそれに百万人単位で上乗せされそうだ。ラオックス<8202>のようにこの需要に特化した家電量販店もあるが、大手であれば外国人観光客の免税扱いにすぐに対応できる。

 2014年にクローズアップされそうな家電系商材としては、「グーグルグラス(メガネ型)」やアップルの「iWatch(腕時計型)」など話題ばかり先行している「ウエアラブル端末」や「パーソナル3Dプリンター」などがあるが、消費増税後の反動減による全球凍結状態を溶かせるほどの力はなさそうだ。経営サイドとしてはヤマダ電機<9831>の住宅事業のように事業多角化に活路を求めることになるだろう。エディオン<2730>はLIXILG<5938>と資本・業務提携した子会社エディオンハウスシステムの住宅リフォーム事業が前期比約3割増の成長をみせており、ビックカメラ<3048>は以前から玩具、酒類、寝具、スポーツ用品、コンタクトレンズなど商材を多様化させ、東京・新宿にはファーストリテイリング<9983>の「ユニクロ」とのコラボ店舗「ビックロ」がある。大手4社ではケーズHD<8282>だけが多角化に消極的で家電の販売ほぼ一本で展開しているが、2014年はそれでどこまで踏ん張れるか、注目される。

 来店客が手ぶらで帰ってネット通販で注文される「ショールーミング」対策は、「ネットもやっているので『O2O(オンライン・トゥ・オフライン)』で誘導する」という小手先芸では後手に回り、じり貧になるだけだろう。もっと踏み込んで、めぼしい家電系ネット通販を買収・系列化して自社陣営に取り込み、アマゾンに一騎討ちを挑むぐらいの大胆な戦略が出てきてもいい。その意味では2014年は、業界大手の経営者の器量が問われる年になる、とも言えそうだ。