2013年12月24日、電子情報技術産業協会(JEITA)は「電子情報産業の世界生産見通し」を発表した。「電子部品」の2013年の世界生産額は19兆7692億円で、前年比で17%の増加。日本国内の生産額は2兆4023億円で前年比で1%減少したが、海外生産も含めた日系企業の生産額は7兆5367億円で、前年比で14%増と2ケタの増加をみせた。海外生産比率は68.1%にのぼり、日本勢全体の世界シェアは38%にのぼる。
電子情報産業の分野別に日系企業の生産額増加率をみると「電子部品」と「ディスプレイデバイス」が14%増で並び、V字回復した「半導体」の8%増をしのぎ、「コンピュータおよび情報端末」の3%増、薄型テレビなどの「AV機器」の1%減などよりもはるかに大きな伸びを示した。世界生産額もその伸び率も最大の電子部品メーカーは、日本の電子情報産業の「稼ぎ頭」になっている(生産額は年間見込み)。
海外生産比率が7割近いので、日本の電子部品各社の業績を左右したのは為替レートよりは「スマホ・タブレット端末」の需要動向。その中でもアップルへの依存度の高さがはからずも露呈した事件が2013年1月の「アップル・ショック」だった。2012年9月に発売された「iPhone5」の販売が伸び悩んだため、アップルは部品調達先に対し1月からの大幅減産を通告。iPhone主要部品の約4割を供給していた日本の電子部品メーカーは凍りついた。アップル依存度を高めていたTDK<6762>は2013年3月期の通期業績見通しの下方修正を余儀なくされた。この時、リスクを分散させるために、アップルとスマホの世界シェアトップを争っている韓国のサムスン電子への供給を増やしたメーカーも出たとみられている。
アップル・ショックは9月に発売され、日本でもNTTドコモ<9437>が新たに取り扱いを開始して人気が盛り上がった新型iPhone「5s」「5c」で取り戻すことができたといわれるが、10月末、村田製作所<6981>と日東電工<6988>が9月中間決算の際に発表した通期業績見通し修正の理由でも、村田製作所は「スマホ向け受注が好調」と営業利益を20%上方修正し、日東電工は「スマホ新機種の立ち上がりが想定より遅れた」と営業利益を下方修正していた。このように良しにつけ悪しきにつけ、2013年はスマホに明け、スマホに暮れた1年だった。
それでも総じて言えば業績は好調で、日本電産<6594>は業績がV字回復し、TDKもスマホ向け部品は順調に回復。アルプス電気<6770>は2014年3月期の通期業績見通しの営業利益を前期比3.5倍に上方修正している。太陽電池やプリンターや携帯端末など電子部品以外の事業も大きい京セラ<6971>は通期見通しを売上高だけ300億円上方修正したが、据え置きでも営業利益は82%増を見込んでいる。
電子部品産業は今や、円安メリットで業績好調の自動車産業と並び「日本最強の産業」と呼ばれることもある。(編集担当:寺尾淳)