近年、アンチエイジングという言葉を耳にする機会が多くなった。美容やコスメの分野で使われることの多い単語だが、老いは何も、見た目や美しさだけの問題ではない。
老いを感じる瞬間は、人それぞれだ。白髪やしわで感じる人もいれば、体力や記憶力の衰えで歳を実感する人もいるだろう。また、いくら若いと思っていても、老眼などの身体機能の低下を自覚してしまうと、老いを認めざるを得なくなる。
そんな廊下を感じる身体機能の低下の一つに「難聴」がある。75歳を超える日本人の3割以上が、加齢に伴う難聴を自覚していると言われており、今は大丈夫でも、決して他人事と看過できるものではない。また、難聴は耳鳴りを伴うことが多く、成人の4人に1人が慢性的な耳鳴りを感じているという。耳鳴りは、集中力の低下や不眠、不安感といった精神的なストレスを引き起こし、コミュニケーションの減少や生活の質の低下を招く。さらに耳鳴りには、病気が潜んでいることもある。しかしながら、これまで耳鳴りの有効な治療方法は見つかっていなかった。
ところがこの度、ローヤルゼリーなどのミツバチ産品で知られる山田養蜂場が、岐阜大学医学部附属病院・耳鼻咽喉科・頭部外科医療情報部の青木光広准教授との共同研究により、「酵素分解蜂の子」の耳鳴りに対する有用性を初めてヒト試験で科学的に実証した研究成果を報告したのだ。
「蜂の子」は、その名の通り、蜂の幼虫や蛹のことだ。長野県、岐阜県、愛知県を中心に郷土料理として親しまれている。また、蜂蜜やローヤルゼリー、プロポリスなどのミツバチ産品に比べると馴染みが薄いが、約2000年前に著された中国最古の薬物学書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」にも最上ランクにあたる「上品(じょうほん)」として記されているなど、日本のみならず世界の国々で薬として使用されてきた歴史がある。これまでから「蜂の子」には聴力回復や耳鳴り軽減に効果があるといわれていたものの、科学的に検証された例は少なく、今回の研究報告はそれを実証した貴重なものとなりそうだ。
本研究では、軽度の耳鳴りを自覚する男女60名を対象に、「蜂の子」の耳鳴りに対する効果を、客観的で科学的信頼性の最も高い試験デザインといわれる「プラセボ対照ランダム化二重盲検試験」にて調査した。試験に使用されたのは、「蜂の子」に豊富に含まれるたんぱく質を摂取しやすいように、酵素によってペプチドやアミノ酸に分解した「酵素分解蜂の子」だ。この「酵素分解蜂の子」飲用後では、耳鳴りの大きさ、耳鳴りの長さ、耳鳴りの頻度、耳鳴りの気になり方のトータルスコアが、飲用前と比べて有意に改善した。また、疲労感スコアの調査結果では、「酵素分解蜂の子」飲用後に疲労感が軽減しており、耳鳴りの改善度と疲労感の軽減℃には相関があることも明らかになった。
ストレス過多の現代社会において、耳鳴りは現代病といえるだろう。これまで有効な治療方法のなかった耳鳴りだが、今回の研究結果によって「酵素分解蜂の子」が希望の光となるかもしれない。また、「酵素分解蜂の子」は耳鳴りの軽減効果以外にも、様々な可能性を秘めているという。いつまでも若々しく元気に暮らすためにも、これからのさらなる酵素分解「蜂の子」研究にも期待したい。(編集担当:藤原伊織)