2012年6月に厚生労働省が6年ぶりに発表した「平成23年歯科疾患実態調査」によると、80歳以上で自分の歯を20本以上もつ「8020運動」の達成率がはじめて30パーセントを超え、日本人の歯が長寿命傾向に進んでいることが分かった。その反面、とくに中・高齢者の間で歯周病の割合も増加しており、残存歯数が増加したことがトラブルに拍車をかけ、より深刻な問題となっている。
日本の歯周病人口は全人口の50パーセントにのぼるといわれており、30歳以上になると約80パーセントもの人が、程度の差はあれ、罹患しているといわれている。しかも、その内の7割以上もの人が治療もせずに放置しているのが現状だ。しかし、歯周病は、循環器の疾患や糖尿病といった他の生活習慣病にも深く関係していることが明らかになっており、口腔内だけでなく身体全体の健康維持のためにも、歯周病の予防と改善は必要だ。
歯周病予防の一般的な方法としては歯磨きがある。適切なブラッシングで歯周病の原因となる歯垢を取り除いたり、歯に付着しにくくすることが、歯周病の予防には最も大切だ。
医薬品メーカーの中でもLION<4912>などはとくに歯周病対策には力を入れており、歯や歯茎の状態、好みなどを考慮したハブラシ「デンターシステマ」シリーズを幅広く展開している。また、PHILIPSの「ソニッケア」シリーズ、パナソニック<6752>の音波振動ハブラシ「ドルツ イオン」など、歯周病予防やケアのための電動ハブラシの需要も増えている。
歯周病は今や国民病とも言うべきものになりつつあり、NHKの人気情報番組「あさイチ」や「ためしてガッテン」などでも度々取り上げられるなど、国民の関心も高い。
そのような状況の中、非常に興味深い研究結果が、歯周病や歯科医療の分野とはあまり関係がなさそうな「養蜂」の現場から発表されて話題となっている。
学術誌「Biomedical research」に発表された研究報告によると、ローヤルゼリーが、歯周病で傷ついた、歯を支える歯周組織の修復を促し、さらには歯周病菌による歯周組織の炎症を抑える可能性が明らかにされた。研究を行ったのは、山田養蜂場が2008年の創業60周年を機に設立した「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」にて助成を受けた大阪大学大学院歯学研究科の柳田学助教らの研究グループで、以前より、歯周病の発症メカニズムや予防方法について、研究を重ねてきた。
今回の研究では、マウスの歯を支える歯槽骨と歯根を繋ぐ組織「歯根膜」の細胞を用いて行われ、歯周組織の修復機構である石灰化や、歯周病菌による炎症に対するローヤルゼリーの働きを探った。その結果、ローヤルゼリーが歯周病の予防や症状改善の一助となる可能性があることが示されたという。ただし、この成果はまだ培養細胞を用いた試験によるものであるため、今後、動物やヒトを対象とした検証が行われていく。
今後益々、高齢社会を迎えるにあたり、健康に対する関心は高まる一方だ。とくに中・高齢者の8割が悩みを抱え、糖尿病や肺炎、動脈硬化などの原因にもなる可能性が指摘されている歯周病への注目はますます高まってくるだろう。「歯周病にはローヤルゼリー。」近い将来、それが常識となる日が来るかもしれない。(編集担当:藤原伊織)