世界一の借金大国が他国と減税競争の場合か

2014年06月16日 17:59

 野田佳彦前総理は法人税減税を成長戦略の柱に据えようとしている安倍晋三内閣に疑問を呈した。「累積債務が約1000兆円にも上る世界一の借金大国が、他国と減税競争している場合か」などとしている。

 野田元総理は法人税減税を柱に据えた取り組みには違和感があるとして、3つをあげた。第1は黒字企業が3割しかない中での減税効果。野田前総理は「減税して景気を回復させれば税収は増加するような効果があるのか」とし「米国レーガン政権も日本の小渕政権も減税政策を取ったが、成長につなげることはできず、財政赤字を拡大させただけだった。まして、我が国の場合、全法人に占める赤字法人の割合は約7割。逆に言えば、法人税減税の恩恵を受ける黒字法人はたった3割なので、その効果は薄いとみるべき」と問題提起した。

 第2に日本の財政事情からの反論。野田前総理は「国家財政に余裕があって、黒字が生じているなら減税は大歓迎だが、国内総生産(GDP)の約2倍もの借金の山を積み上げておいて、比較的に財政が健全な国々と減税を競うなんてありえない話」と指摘した。

 第3は国民感情だとした。野田前総理は「秋から暮れにかけて来年度税制改正の議論が行われるが、消費税の10%への引き上げと法人税減税が同時に議論されることになる。消費税引き上げは社会保障財源の確保のためだが、国民は企業優遇のための財源ではないかと疑うのではないか。安倍政権においては社会保障のあり方に関する熱意も議論も足りないだけに消費税引き上げの意義そのものが揺らぎかねない懸念がある」と警鐘を鳴らした。(編集担当:森高龍二)