近年、自動車のエレクトロニクス化が進み、各社、自動車向け製品の開発が活発化している。その中の1社であるロームも、現在20%程度の売上比率を30%に引き上げようと自動車向け市場に注力しているという。
まず、長寿命、省エネ、デザイン性の観点からLED化の進むランプ。特にヨーロッパはデザイン性を高めるためにLED化が進んでおり、またDRL(Daytime Running Lights)についてもEUで2011年2月より法制化され、高機能化が進んでいる。こうした中、ロームでは、LEDのみならず、LEDを駆動するドライバの開発に注力。2011年5月には、業界初のヘッドランプ/DRL用LEDドライバの1チップ化に成功、部品点数の削減、回路の簡素化などで好調となっている。
また近年、自動車の電子化が急速に進むと共にECU数も増え、ユニットでの電源の通電時電流の低消費化が大きな課題となっており、車載メーカからは、動作時の消費電力を減らすと共に暗電流を従来比で半分以下に抑えるような要求がきているという。これに対しロームは、6月に業界最高の超低暗電流6μA(従来より80%減)を達成した電源ICを開発。暗電流とは自動車の待機時(エンジン停止時など)に回路で消費される電流のこと。具体的にはリモコン(キーレスエントリー)やセキュリティ装置の待機電力、オーディオやコンピューター(ECU)の記憶保持、時計など、エンジン停止の状態でも消費される電流である。ロームの開発した電源ICでは、エンジン停止時だけでなく、車載に用いられる様々な電源に使用することで、走行時を含めた自動車全体の低消費電力化を実現。EV,HEVでは、省エネの観点から航続距離の伸長にも大きく貢献するものとなっている。
さらに、EV,HEVにとってインバータ回路の高効率化は至上命題であるため、高温対応、低消費、高効率化などを実現できるSiCへの注目度は高い。ロームは、世界初フルSiCモジュールを3月に量産開始するなど業界をリードする開発を進めており、性能をアップした第2世代のダイオード、トランジスタも6月に相次いで発表。これらインバータ回路を高効率で駆動させるためのSiC対応のゲートドライバも製品化しており、自動車へのSiC投入に向けて開発を加速している状況にある。
その他、高温、高耐圧、絶縁耐圧、省エネといった要望が強いディスクリート品などはすでに数多く採用されており、新製品として超低IR―SBDを投入するなど、さらなるラインアップの拡充も図っている。また、ノイズの影響など、車載メーカの担当者でもそこまでやっているところは無いというほどのチェック体制(スクリーニング)を整えており、品質へのこだわりも強みの一つとなっている。
車載用半導体メーカは、自動車メーカと密接に提携する必要がある。その為、自動車産業大国である日本の半導体メーカは優位にあると言えるであろう。EV・HEVの普及が進められる中、ロームがどれだけ目論見通りの売上を達成することが出来るのか、注目が集まるところであろう。